掲載日 : [2006-03-01] 照会数 : 7179
静岡県・韓国と交流拡大へ通信使400周年に照準
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豊富な遺物活用
【静岡】静岡県は06年度から韓日文化交流の一層の拡大を図っていくことになった。行政主導で朝鮮通信使ゆかりの県内12市町村のネットワーク化を推進し、韓国との市民レベルの文化交流を点から面へと広げていきたい考えだ。「静岡に文化の風を」と、常葉学園大学の金両基客員教授が88年から提案してきたものが、ようやく行政の施策に取り入れられたかっこうとなった。
朝鮮通信使一行は当時、東海道を江戸へ向かう途中、静岡県内の浜松、掛川、藤枝、江尻(清水)、三島の各宿場に宿泊した。1607年の第1回使節団は折戸湾を船で遊覧、駿府(静岡)では徳川家康に接見した。
朝鮮通信使が宿泊し、休憩に使った客館には多くの文士が押し寄せた。両者の交流を通じて多くの文献や絵画が残されたが、なかでも通信使一行の残した揮毫は特に人気があったという。静岡では県内に残されたこうした扁額の数が、日本に残る朝鮮通信使縁故地の中で最も多い。静岡市内の清見寺には朝鮮通信使が残した扁額や書画など多数の遺物があり、94年に「朝鮮通信使遺跡」として国の史跡にも指定されている。
金教授は史実を踏まえて02年に地元在日同胞らに呼びかけて静岡で初の通信使行列を再現し、自ら正使役も担った。03年には済州道市民にも参加を呼びかけ、さらに規模を拡大して成功させた。また、05年には常葉美術館で朝鮮通信使展も開催している。
県が「韓国とは共通の文化的基盤、善隣友好の事実がある。ゼロからの交流でない」と胸を張れるのもこうした市民レベルの後押しがあったからこそだ。担当の文化政策室では「県内に残る多くの絵画や文献の記録をデータベース化する。同時に、日韓両国の伝統文化のつながりや共通点を調査、県内はもとより韓国にも情報発信していきたい」と計画を語る。このほか、朝鮮通信使をテーマにしたシンポジウム開催も予定している。
昨年も「韓日友情年」にちなみ県内でも市民レベルでいくつもの韓日交流イベントが繰り広げられたが、これら個別の交流を相互に連携させながら、県内の縁故地12市町村のネットワーク化も狙う。その際のキーワードとなるのが朝鮮通信使400周年。すべては来年の400周年に向けた布石づくりとなる。
400周年には記念イベントが全国的に目白押し。静岡市でも「大御所家康公駿府城入城400年祭」が控えている。県ではこれに合わせて朝鮮通信使パレードを再現して静岡をアピールし、09年春の開港を目指す静岡空港の就航予定先である韓国と一層の交流拡大を図っていきたい考えだ。
(2006.3.1 民団新聞)