掲載日 : [2006-06-07] 照会数 : 9482
近江から韓日友好史発信 「渡来人歴史館」オープン
[ 河炳俊代表が私財を投じて開設にこぎつけた ]![](../old/upload/44877ddd321a2.jpg)
単一史観是正促す 中高生の学び舎に…同胞市民団体
【滋賀】渡来文化ゆかりの近江地区、滋賀県大津市に「渡来人歴史館」がオープンした。この地が古代から韓半島と密接な人的交流があったことを同胞市民団体「近江渡来人倶楽部」(河炳俊代表=58)が6年がかりで検証し、その成果をパネルなどで展示している。5月28日から一般公開が始まった。
歴史館は4階建て。2階が3つのコーナーで構成する展示会場。「日本と韓国・朝鮮のつながり」を紹介するコーナーでは有史以来、韓半島から膨大な数の渡来人が定着し、日本の国家建設に重要な役割を担ってきたことを紹介している。
パネル説明では一部で言いたてられてきた単一民族史観の誤りをただし、友好の歴史が大部分で、侵略の歴史はごく限られた期間だったことを浮き彫りにした。このことは多民族共生社会の実現を願う渡来人倶楽部のメッセージとも一致する。
もう一つの「近江と渡来人」のコーナーでは古墳時代からの出土品や新羅・高句麗・百済などからの渡来人と関係の深い寺院などにスポットをあて、近江と渡来人の深い結びつきを鮮明にした。全長4㍍に及ぶ朝鮮通信使関係年表も目を引く。
展示会場は図書資料コーナーと合わせても全体で120平方㍍余り。決して広いとはいえないが、「でこぼこをつけて立体的にした」というだけに「狭いけど広く感じる」と来館者からは好評だ。3階は100インチ大型プロジエクターを備えた研修会場となっている。
「日本列島と朝鮮半島との関係(人的交流)について客観的で正確な歴史認識を普及させる事業」は近江渡来人倶楽部が発足以来掲げてきた行動目標だった。理事の一人で郷土史にも造詣の深い日本人の美術教員が基本的な資料収集を担当、大津市国際親善協会顧問の平野喜三さんや河代表ら5人のメンバーで幾度も勉強会を重ね、開設にこぎつけた。内装だけでも1000万円をかけたが、これらは河代表自ら負担した。また、歴史考証は映画「在日」を監督した呉徳洙さんの協力を得た。
河代表は「在日コリアンと日本人との共生の足がかりができ、ほっとした。県内の中学生や高校生には総合学習の教材に使ってほしい。3階の研修会場では学習会もやっていきたい」と意欲的に語った。福井県から見学に訪れた小学校教頭の大森和良さんは「日韓の歴史を学ぶ場所が、東京に続いて近江にもできたのはうれしい。全国に広がることを願っている」と話していた。
歴史館は大津市梅林2‐4‐6。JR大津駅南口徒歩5分。午前10〜午後5時(月・火曜日休館)。入館料200円。℡077・525・3030。
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近江渡来人倶楽部
日本に永住する在日韓国・朝鮮人と韓半島にルーツを持つ日本人を中心として00年4月1日に発足した。会員は50人余り。地域社会への貢献を旨とし、多文化共生社会の実現に向け定期的にシンポジウムや交流イベントを開催している。今回の資料館開設は「日本列島と朝鮮半島との関係(人的交流)について、客観的で正確な歴史認識を普及させる事業」の一環としての位置づけ。
(2006.6.7 民団新聞)