掲載日 : [2006-07-24] 照会数 : 5672
祭祀「よい」7割が肯定 伝統大事にする3・4世
[ 調査結果を発表するプロジェクトの中心メンバー ]
「アプロ女性実態調査プロジェクト」報告
近畿圏818人在日女性調査
【大阪】近畿圏に在住する在日同胞女性の生活実態に光をあてた初の意識調査の結果が、主に大阪を生活の本拠とする在日女性で構成する「アプロ女性実態調査プロジェクト」(李榮汝代表)の手でまとまった。サンプルを構成した対象者の中心世代が3・4世なら、調査した側もほとんど3世。最近の在日女性の生活の一端が浮き彫りになった。
感あるが大胆な簡素化は慎重
調査対象者のうち30・40代の3世が487人(60・7%)と最多。2世が2番目に多い。地域的には生野区の回答者が全体の38%を占めている。国籍別には韓国籍が7割、朝鮮籍2割、日本籍も約1割含む。
興味深いのが文化的固有性に関する質問事項。祭祀では「やっていてよい」と思うことが「よくある」から「まれにある」までの合計が全体の73・7%に達していた。「よい」と答えた理由は多い順に「家族・きょうだいが集まる」「個人を追慕する場」「親族が集まる」「朝鮮人の伝統文化」の順だった。
逆に「よくない」と答えたのは「女性に負担が大きい」「経済的負担が大きい」「長男夫婦、特に長男の嫁に負担が偏っている」ことへの不満が大きい。伝統的形式を簡素化すれば女性の負担が軽減されそうだが、「大胆な簡素化」には慎重な姿勢が目立つ。
プロジェクトメンバーの梁愛舜さんも「伝統的形式を守る」と回答した3世が多くいたことは予想外だったと驚きを隠さない。
このほか、女性に対する暴力(DV)の有無も大きな関心事に挙がった。配偶者や恋人がいるとされる652人のうち、暴力や暴力的な言動にあったという女性は約22・2%と決して少なくない。年代的には40歳以上が多かった。10人のうち2人が暴力を受けている現実に、調査にあたったメンバーは「暴力に苦しむ女性が1人でも2人でもいるというこの事実の重さに対して、問題提起せざるをえない」と深刻に受けとめている。
今回の調査はマイノリティーとしての在日同胞女性の実態を明らかにし、女性差別と民族差別、そのほかの差別によって人権を尊重されていない実態がないかどうかを在日同胞女性自らの手で見極めることだった。
李代表は「調査結果は驚くほど示唆に満ちていました。この報告書がマイノリティーに対する社会的施策の改善をはかり、共生社会の実現を一歩進める資料になれば」と話している。
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調査のあらまし
調査対象となったのは全体で1350人。03年8月に発足した「アプロ女性実態プロジェクト」のメンバー42人が各自、人的ネットワークを唯一の頼りにコツコツ対象を広げ、それぞれ質問用紙を送った。調査票は14ページ。質問項目は実に150に及んだ。05年5月で締め切り、最終的に目標を上回る818人から回答を得た。
(2006.7.24 民団新聞)