掲載日 : [2006-07-24] 照会数 : 8101
歴史認識共有で成果 共通副教材発行から1年
韓中日教師ら
韓国・中国・日本の3カ国の研究者・教師らが共同で編集・執筆した共通副教材『未来を開く歴史‐東アジア3国の近現代史』が、3つの国で着実な支持を得ている。「日中韓3国共通歴史教材委員会」によれば、発刊から1年で日本版が7万、韓国版は6万、中国語版は12万の計25万部を売った。新たに第2版が出版されるのを記念しての国際シンポジウムが8日、東京・千代田区の明治大学で開かれた。
シンポジウムでは同教材を実際に使用している3カ国の教師が、「生徒がどう読んだか」についてそれぞれの教育現場から実践を報告した。
立命館宇治中学・高校の社会科教員、守口等さんは、生徒たちの「知りたい」「学びたい」という知的好奇心を揺さぶった「まさに目からウロコの書」と感想を述べた。
鷲見友貴子さん(宇治高校3年)は、「教科書には出ていない自分の知らない歴史の側面を知った。正しく判断できる力を身につけられる」と歓迎した。永畑郁さん(同3年)も「慰安婦」問題を例に挙げながら、「本当のことを知るのはそんなにいやな気分ではない。知れば、思うことも考えることもできる」と率直な感想を述べた。
一方、これまで十分に知り得ていなかった日本の残虐行為、加害に関わる事実を突きつけられて「日本はひどい」「つらい」という感想を持った生徒がいたのも事実。守口さんは陰ながら日本の植民地支配に抵抗した民衆が存在したことも併せて教え、生徒同士の討論で克服していく努力をしたという。
ソウル良才高等学校教諭の朴中鉉さんは同副読本を教材に6月、韓国の教科書には登場しない沖縄戦をテーマに授業を行った。沖縄では住民が本土決戦を通じて戦争被害を直接体験したこと、日本人からいわれなき差別にさらされてきたことも植民地化の韓国と共通する点が多いというのが理由だった。
このほか、上海中学・高校の教員、孔繁剛さんからも、韓国・日本・香港・マカオ・台湾の学生が共に学ぶ国際部高校1年の歴史の時間に本書を使い、肯定的な反応を得たとの報告がされた。
この日、基調報告に立った笠原十九司都留文科大学教授(日中韓3国共通歴史教材委員会代表)は、「『未来をひらく歴史』は東アジア共同体、東アジア市民社会の形成に必要な『歴史認識の共有』に向けた第1歩を印したということができる」と総括した。
(2006.7.24 民団新聞)