掲載日 : [2006-08-15] 照会数 : 9318
細尾蝶 天竜川西岸で繁殖 有志らで「守る会」計画
[ 羽化を待つ細尾蝶のさなぎを確認する小畠さん(右)=天竜川西岸 ]![](../old/upload/44d97e80b8706.jpg)
浜松市内
【静岡】韓国をはじめとして主にアジア大陸東部に分布している細尾蝶(ホソオチョウ、韓国名kkori‐myongju‐nabi)が静岡県の天竜川西岸で優雅に乱舞し、子どもたちの人気を集めている。地元浜松市教育委員会では7月、ユネスコ科学教室との共催で全国初の観察会を共催し、今後の保護にも関心を寄せている。一部有志の間では「守る会」をつくろうとの動きもある。
地元で初の観察会 韓日交流架橋役も
浜松市内の元小学校校長で40年来の蝶収集家として知られる小畠逞壯さんは細尾蝶の魅力を次のように語る。
「絹のような尾っぽでフワフワ優雅に舞う。白磁を思わせる気品は韓国の文化を感じさせる。美しさは一級品。憧れのギフチョウをもっとクラシカルにした感じ」。
小畠さんは今回の観察会を開くにあたって細尾蝶のルーツを探ろうと市教委の関係者とともに初めて訪韓、韓国昆虫学会を代表する朴奎澤博士と意見交換してきた。この結果、日本の細尾蝶は「モンテーラ」と呼ばれる韓国タイプということがわかった。
韓国では30年代から50年代にかけて大陸を南下し、分布を広げたという研究結果があるが、気流に乗って日本にまで渡ったものかどうかは不明。人為的に持ち込まれたとの説がいまのところ有力のようだ。
観察会には家族連れ約200人が集まった。子どもたちは網を手に細尾蝶を追いかけ、食草としているウマノスズクサの葉をかき分けて細尾蝶の幼虫やさなぎを探した。浜松ユネスコ科学教室が河川敷に建てた仮設テントでは日本に入ってきたルートを示す仮説をパネルで提示し、韓国の図鑑も置いた。子どもたちには「初めて見たけどきれい」と好評だった。
一部では同じくウマノスズクサを食草としているジャコウアゲハの生態系に影響を及ぼすのではないかと心配する声も。これは外来種一般への負のイメージに基づくもののようだ。専門の研究者は「共生できている」と語っていた。
浜松市教委の関係者は「細尾蝶が外来種でも、どこから来たかは関係ない。その美しさは普遍的。天竜川の河口に来たら誰もが細尾蝶を見ることができるようになればいい」と今後の保護に意欲を見せている。
この日の観察会に参加していた評論家の金両基さんは細尾蝶の保護に関心を寄せ、「守る会ができたら真っ先にメンバーに加わってお手伝いしたい」と述べた。
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【細尾蝶】チョウ目・アゲハチョウ科に属する。オスは全体が白っぽく、メスは黒い部分が多い。橙色の斑文が透けて美しい。後翅にある細長い突起が和名の由来。韓国では一般的だが、日本には生息していなかった。78年、都内で初めて確認された。天竜川河口では80年代後半から生息していたとされる。このほか、山梨、京都、岐阜、高知でも確認されている。
(2006.8.15 民団新聞)