掲載日 : [2006-08-15] 照会数 : 6522
隠された虐殺の爪痕 関東大震災の現場フィールドワーク
[ 6人の同胞が埋められていたなぎの原の現場で ]
在日韓国YMCA主催
関東大震災の混乱のさなか、官憲による意図的な流言飛語で在日同胞6000人以上が虐殺された歴史現場を訪ね、犠牲者を偲ぶフィールドワークがこのほど、在日韓国YMCAの主催で行われた。同YMCAが創立100周年を記念して企画した連続講座の一環。
訪れた現場は千葉県船橋市と習志野市、墨田区の木根川橋周辺と横網公園など5カ所。歴史家の姜徳相さん(滋賀県立大学名誉教授)が随行し、解説にあたった。
各虐殺現場で共通しているのは徹底的な隠蔽工作だった。
船橋では1923年9月4日、駅付近(天沼)で女性3人を含む53人が殺され、沼に放り込まれたことが生き証人によって目撃されている。後に朝鮮人側の調査を恐れた住民は遺体を堀り起こして火葬にし、遺骨を粉々にして証拠隠滅を図ったという。馬込霊園の現場には船橋仏教会が「法界無縁塔」の碑を建て供養してきた。だが、この碑は加害の事実をまったく伝えていない。
虐殺の事実に口をつぐみ、知らぬ存ぜずを決め込んでいるのは高津地区でも同様。習志野に駐屯していた軍隊から高津地区住民に払い下げられ、斬首された6人が葬られていた場所に虐殺の事実を示す標識はない。
姜さんは「虐殺の事実を徹底的に隠してきた。(地域の人たちは)慚愧の思いから80余年たったたいまも解放されていない」と沈痛な表情で語った。鶴見オリニ会の今本陽子さんは「虐殺の事実をきちっと歴史に残すことの重要性を知らされた」と感想を語っていた。
(2006.8.15 民団新聞)