掲載日 : [2006-10-06] 照会数 : 7213
新規外国人受け入れ論議に一石…都内でシンポ
「超少子化」考えるシンポ…
まず「在日」の処遇改善を
昨年から本格的な人口減少期に入り、「超少子化」が進むなか、21世紀の外国人政策を考えるシンポジウムが9月29日、都内の国連大学で開かれた。シンポでは秩序ある外国人の受け入れが欠かせないとの意見が大勢を占めた。一方で、少数意見ながらも、在日韓国・朝鮮人に代表されるオールドカマーや、すでに定住している在日外国人の処遇をないがしろにしたままで日本のこれからの在日外国人政策を語れるのかという声も聞かれた。今後の論議に一石を投じたかっこうだ。
教育、年金問題など山積…地方参政権付与でも注文
シンポは日本の民間団体、外国人政策研究所(坂中英徳所長)が主催した。法務省副大臣当時、省内のプロジェクトチームを率い、法務省としての「今後の外国人の受入れに関する基本的な考え方」をまとめたばかりの河野太郎衆議院議員が基調講演を行い、5人のパネラーが意見を述べた。
河野議員は現状では認められていない単純労働者を一定の条件のもとで日本社会の一員として受け入れ、永住にも道を開くべきだとの考えを示した。具体的には労働ビザで受け入れ、技術面と日本語能力の両方からスキルアップを図ってもらいながら、日本社会への永住・定住を促していくというもの。ただし、受け入れの前提として犯罪者対策の強化を挙げた。
特別永住者の資格を持つ在日韓国・朝鮮人については、「戸籍に準じたものを自治体につくってもらう。(日本)国民と同じしきりでいい」と述べ、一般外国人を管理する入管制度からは切り離すべきだとも述べた。これは日本人と同様、住民基本台帳に登録し、行政サービスの対象として位置づけようというもの。
パネラーの一人で地方自治体の外国人住民施策を研究している明治大学の山脇啓造教授も「ほとんど異論はない」と河野議員の考えに賛意を表明した。
一方、同じくパネラーを務めた在日韓国人の李敬宰さんは「すでに来ている200万人、とりわけ在日韓国・朝鮮人をどう処遇していくのか。外国人として先輩にあたる韓国・朝鮮人がいまだに入居や就職にあたって国籍で差別されているという現実があるのに、どうして新しい外国人が日本にやってきて貢献しようと思うだろうか」と異議をはさんだ。また、外国人施策と犯罪対策をセットにした考えにも疑問を投げかけた。
これに対して河野議員は「外国人を受け入れようというとき、真っ先に犯罪者対策を盛り込まないと提案自体が宙に浮く」と苦渋の表情を示した。ほかのパネラーからも、外国人を受け入れる立場の日本の外国人観が変わらないと難しいとの意見が聞かれた。
会場からは龍谷大学教授の田中宏さんも、「これから来る外国人ではなく、もう入っている外国人をどうするのか。日本国籍を取ればたいていの問題は片付くというが、本当にそうなのか」と提起し、在日外国人高齢者の無年金や外国人学校の処遇問題を挙げた。また、地方参政権にも言及し「お隣の韓国は開放した。日本国はどうするのか。きちんと議論してほしい」と注文をつけた。
坂中所長は「いまいる人の処遇が大事」とした田中教授の意見に「賛成だ」としたうえで在日韓国・朝鮮人の無年金問題については「政治家が外国人の問題に無関心だった」と述べた。
(2006.10.4 民団新聞新聞)