掲載日 : [2006-11-29] 照会数 : 6692
世界韓民族農業人ネットワーク化(上)
[ 金完培 ]
統一後の食糧安保に向け…海外同胞と協力必須
農産物の世界的な自由化潮流のなかで、韓国農業はどこに打開策を求めるべきか。(社)農産漁村弘報戦略フォーラムの金完培代表は、海外同胞との協力が不可欠だと主張する。論文「世界韓民族農業人ネットワークの構築方案」の要旨を2回に分けて紹介する。
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国際化の波
世界貿易機関(WTO)のスタートは自由貿易拡大の本格的な始まりを意味し、韓国農業もまた開放・国際化の波にさらされることになった。
ウルグアイ・ラウンド(多角的貿易交渉)の農産物交渉が妥結してから10年。その間、韓国農業の競争力を高めるためさまざまな努力がなされてきたにもかかわらず、自由化の波に揺れ続けている。守勢一方の対策だけでは韓国農業の活路を切り開くことは難しく、代案を早急に模索すべきだろう。
隣りに中国を控え、韓国内の低価格・低品質市場は中国農産物をはじめとする輸入農産物が席巻しているため、価格面での競争は不可能だ。韓国の進むべき道は高品質農業に求めざるをえず、輸出農業に注力してこそ道は開けよう。
一方、統一後の農業像を想像した場合、いま一つの悩みが生じる。北韓の大変な食糧難と20%にも満たない韓国の食糧自給率を考えれば、統一後の食糧安保がさらに深刻な問題として浮上してくるからだ。
3番目の僑民数
したがって、輸出農業と統一後の食糧安保という2つの課題をより効果的につ解決できる道を模索しなければならない。解決の糸口は海外に求めざるをえないが、ここで国外事情について触れてみたい。
韓国の海外同胞(海外同胞および在外同胞)は、5500万人の華僑、860万人のユダヤ人に次いで世界で3番目に多い600万人を超す。いわゆる僑民大国で、米国に206万人、中国に204万人、日本に66万人、旧ソ連に49万人、カナダに10万人、中南米に10万人など世界140余カ国に分散している。多くの同胞が生産はもちろん流通や加工など農業関連分野に従事している。
その大部分が母国の支援もなく自力で達成したことから、自生力に優れ、現地事情によく通じている。しかし、韓国は海外同胞の優れた力量や潜在力を活用しえないでいるのが現状だ。海外同胞の立場からは、母国で開発された新技術や資材、新商品に接近しうる道が制限されてきた。
遅きに失した感は否めないが、今からでも農業分野の海外同胞と母国が力を合わせて韓民族農業人のネットワークを築き、これを組織的かつ体系的に管理すれば、2つの課題をより早く解決できるにちがいない。
加えて、中国内の朝鮮族、旧ソ連地域の高麗人、中国とロシア地域の脱北者問題も韓民族農業人ネットワークを通じて対処すれば、より大きな成果をあげられる。
例えば、中国内朝鮮族の大部分はコメとトウモロコシに主に従事しているが、穀物の中国内生産量が急増し価格が下落したため、朝鮮族の農業所得も減少した。そのため、所得の高い仕事を求めて移住する現象が起こり、朝鮮族社会に崩壊の兆しが見えだした。中国の1人あたり平均所得の増加にともない、畜産物や野菜類、果実、花卉などの消費が拡大しているので、これらへの転換で所得向上は可能だ。
ところが、朝鮮族のほとんどがこの方面の栽培や飼育技術に弱く、転換に必要な資金もない。母国または他国の海外同胞が資本と技術を支援すれば、中国内の同胞は高所得をあげ、朝鮮族社会の維持に役立つだろう。
脱北者救済にも
また、統一韓国の食糧安保問題に備えたロシア沿海州地域に対する農業開発投資事業を推進する上で、脱北者らを雇用するとともに母国または海外同胞が資本と技術を投資すれば、脱北者問題と海外農業開発事業を連携させながら解決できるだろう。
いずれにせよ、韓民族農業人の力量結集はたんに農業分野の発展にとどまらず、韓国の国際化に大きく寄与するものと思われる。
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プロフィール
キム・ワンベ ソウル大教授。1952年生まれ。ソウル大卒、米ペンシルバニア大農業経済学博士。社団法人農産漁村弘報戦略フォーラム代表。著書に『統一韓国の農業』『IMFと韓国農業の挑戦』など。
(2006.11.29 民団新聞)