掲載日 : [2007-04-04] 照会数 : 9097
「対抗本」を出版 「つくる会」教科書の歴史観糾す
[ 記者会見する「ひらかれた歴史教育の会」メンバー ]
東京・杉並の同胞や市民団体
「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社版歴史教科書を正しく読み解くための副読本が3月31日、東京・杉並区の研究者、教員、市民らの協力で出版された。杉並区教委は05年8月、歴史について扶桑社版教科書を採択。06年度から約5000部が区内の公立中学校で使用されている。これへの対抗措置だ。
学者、教員ら71人参加…単元ごとに問題点指摘
題名は『「新しい歴史教科書」の〈正しい〉読み方−国の物語を超えて』(写真)。05年改訂版に完全に準拠し単元ごとに扶桑社版教科書に見られる独善的な歴史観を批判、グローバルな視点で教えるためのポイントを解説している。3月31日、東京の青木書店(℡03・3219・2341)から出版された。
編集したのは杉並区民が中心となった「ひらかれた歴史教育の会」(代表=中村平治・東京外国語大学名誉教授)。05年8月に杉並区で扶桑社版歴史教科書が採択されるや危機感を抱いた区内の保護者、教員、研究者らが集まり翌9月には「批判本」をつくろうと準備会を発足させ、約1年余りで完成させた。
会では学習会を積み重ね、翌年4月までに古代編、続いて中・近世編と相次いで手刷りの冊子をつくり、学校現場に配布してきた。さらに残された近現代の準備にとりかかろうとしたとき、出版の話が飛び込んできた。出版にあたって執筆に参加した研究者、教員は最終的に71人にのぼる。
3月31日、区内での記者会見に臨んだ中村代表は、扶桑社版教科書の問題点について、①隣国との共生を拒否し、アジアへの共感に欠ける②西洋文明を敵視し、過去の日本の戦争を正当化している③民衆運動を軽視し、民主主義発展の歴史的論理が説明されていない、などと指摘した。
会の副代表を務める趙景達千葉大教授は、「グローバルな時代に杉並区で扶桑社版教科書が採択されたのを黙って見ていられなかった。現場で教師が苦しんでいることも聞いてきた」と明かした。
05年の教科書採択にあたって、杉並区の教科用図書調査委員会事務局が見本本を読んで順位付けした現場教師からの報告書に対し、順位が分からないよう書き換えを指示していたことが区教職員組合の調べで明らかになっている。中には扶桑社版の評価欄が校長によって正反対に書き換えられたというケースもあり、学校現場では「教員の判断に対する圧力だ」と受け止められている。
全国583の採択区でつくる会の歴史教科書を採択したのは杉並区と栃木県大田原市のみ。
(2007.4.4 民団新聞)