掲載日 : [2007-10-24] 照会数 : 5595
指南役好評、無窮花サービス 民団神奈川の団員サポート
[ 相談が多い韓国の墓地問題 ]
民団神奈川県本部(殷鍾七団長)が団員サポートのために実施している「無窮花サービス」が好評だ。特に、本紙で紹介されてからは問い合わせが相次ぎ、事務局はうれしい悲鳴を上げている。本国に不動産を有する在日同胞の相談が多く、その一端を紹介する。
本国の不動産で相談相次ぐ
「全国どこでも連絡を」
「これでやっと、あの世に行っても、祖先に叱られんですみますわ」。先祖を祀るための祖父名義の土地所有権が、氏族の長孫である自分に相続登記ができると分かったからだ。「無窮花サービス」に電話した80歳を超す朴さん(大阪・生野鶴橋在住)の声は震えていたという。
本紙6月27日付に〈民論団論〉「不動産特別措置法‐在日地主には諸刃の剣」が掲載されてから2カ月だけで、無窮花サービスセンターに160件の照会が寄せられた。
この7割が特措法そのもので、3割が韓国内での一般的な土地取引に関する問い合わせであった。担当の崔喜燮さんは「正直、反響の大きさと内容の深刻さに驚くと同時に、民団の果たすべき役割の大きさを改めて感じた」と語る。
冒頭の朴さんは植民地時代に渡日し、70年代に30年ぶりに故郷の土を踏んだ。長孫として連日、祖先の祭祀を取り仕切った。ところが、亡くなった祖父名義の土地の権利関係が複雑で、墓所の相続登記について有効な解決策を見いだせないまま思い悩んでいた。そこへ民団新聞の記事を見て、「目から鱗が落ちた思い」だったという。
一方、「親戚に土地を奪われた。何とか取り返せないか?」といった問い合わせが少なくなかった。北海道に住む金さんもその一人だ。解放直後、5歳だった金さんは、父からの手紙を頼りに母親とともに玄界灘を渡った。留守になる生家の管理は親戚に委ねた。
数年前、金さんは、亡き父が所有していた生家の土地を息子に譲ることにした。しかし、生家を管理していた従兄弟は「その土地は亡くなった叔父(金さんの父親)に10数年前にもらい、自分が所有主だ」と主張、従兄弟名義の登記簿謄本を突きつけた。金さんは「あなたにあげるはずはない」と従兄弟に詰め寄ったが、後の祭りだった。
こうした「土地のすり替え」は、特措法に則り「合法的に」移転された。訴訟を起こしても、金さんが取り戻せる可能性は少ない。
2つの事例に共通するのが、1世の残した故郷の土地を2・3世が継承・管理し、維持していくことの難しさだ。在日地主にとって、韓国語でのコミュニケーションや商習慣の違いなど、克服すべき課題は多い。これを解決するにはどうするか。無窮花サービスの役割がここにある。
「親戚も頼れない、ウリマルも不自由だ。どこを頼っていいか分からなかった。このすばらしいサービスをもっと早く知りたかった」という感謝の言葉があった。
事務局では「1人で悩まずに、全国どこからでも相談してほしい」と呼びかけている。問い合わせは無窮花サービス(℡045・316・0508)担当は崔喜燮。
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無窮花サービス
民団神奈川県本部が98年からスタートさせた団員のための生活密着サービス。冠婚葬祭のサポートから始まり、法律・行政・税務・結婚といった各種生活相談へと事業の幅を広げてきた。最近では韓国のアパマンショップコリア(日本のアパマンショップの100%子会社)と提携しての韓国での下宿・住居探し、不動産売買・送金・管理等のサポートが好評。これと関連、不動産登記に必要な謄本や土地台帳、地積図などの即時発行サービスも始めた。
(2007.10.24 民団新聞)