本部・支部 内容

新入学・子弟を本名で通わせる父母の思い
断ち切りたかった…隠し続ける罪悪感

 新入学を控え、子どもの名前を本名にするか通名にするかで悩んでいる同胞の父母は多い。親が便宜上使用していた通名を、そのまま子どもへ付けて通学させるケースや、名前の違いからいじめなどの対象になるのではないかと危惧して本名を使用させないケースなど理由はさまざまだ。そのような中で、小さいころから本名を名乗らせることによって、韓国人としての意識を培っている同胞父母に話しを聞いた。

 通名で通学した同胞学生の多くは、本籍地を尋ねられたり、歴史の授業で「韓国、朝鮮」という言葉が出てくるたびにヒヤっとした経験を持つ。入学した途端、周囲に自分の出自がバレないように、涙ぐましい努力を続けた同胞も多いだろう。

 40代後半の2人の男性は、通名を使い、韓国人であることを隠し通すために日本人のように振るまい、出自をいっさい隠してきた。自宅に友達さえ呼ばないという負い目と辛さをいやというほど味わってきた。

 子どもには自分と同じ苦しみを与えたくない―。そんな体験を経て2人が出した結論は、子どもに本名で生きさせることだった。

 一人の男性は「本名で生きること」こそが、家庭での民族教育の原点ととらえている。「嘘をついて垣根を作るより、本音で生きること」が、自分に正直に生きることであると身を持って感じている。別の男性は「最初から通名がない子どもたちは名前にも環境にも案外、すぐ慣れるもの。それには親の決断が必要」だと強調する。

 河賢一さん(39)=東京=も現在、小学校4年の一人娘に通名を付けなかった一人だ。河さん自身が自分の本名を知ったのは、大学受験の登録の時だ。それまで自分が韓国人という自覚のなかった河さんは、カルチャーショックを受けたという。「早いか遅いかの違いがあるだけで、いずれ韓国人であることに直面する。それならば最初から分かった方が健全。親が韓国人として日本人と対等であるべきだと思うのであれば、本名を名乗るのが自然」と語る。

 そして、韓国にルーツを持ち、日本人と同じように日本社会を知る同胞は、今後の韓日友好関係において欠かせない存在になるだろうと、前向きな姿勢でとらえている。

 李赫洙さん(37)と金純瑛さん(36)=東京=夫婦は共に東京韓国学校の卒業生だ。純瑛さんは幼稚園のころ、通名を使用していたが、韓国人でありながら日本の名前を使う宙ぶらりんの状態に違和感を感じてたのも事実。民族学校で韓国人として意識が培われるに従って名前に対するこだわりがでてきた。

 純瑛さんは親が子どもの心理を読みとって、自信をつけてあげることが大事だと指摘する。いつも子どもたちに「日本の社会で学ぶ以上の韓国独自の世界を知ることはとても得なこと」だと話しているという。

 大阪に住む姜南保さんも高校まで通名で通した。高校の時、友人に韓国人であることを告げたが信じてもらえず、外国人登録証まで見せ、友人でいてくれるかと尋ねたことがある。韓国人であることを隠し通し、後に自分の出自を知った友人が離れていくことが辛かったからこそ取った行動だった。この経験があったからこそ、通名を使うことで緊張を強いられてきた自分と同じ思いだけはさせたくないと、4人の子どもたちを本名で育てている。

 取材を通して父母から「自分の二の舞をさせたくない」という意見が多く聞かれた。自らの出自を隠すことは人格のほとんどを嘘で包み隠すことにもつながる。もちろん、本名で通学したばかりにいじめの対象になる可能性は否定できない。しかし、それを恐れ縮こまっていて在日同胞社会の明るい未来はあるのだろうか。

 50年代から70年代のような厳しい差別社会から、日本社会も大きく変化した。過去の因習にとらわれず、同胞自身が自らを主張しなければならない時期にきているのではないだろうか。

◆「本名」について皆さまのご意見、ご感想をお寄せ下さい。送り先は、民団新聞(FAX03・5419・7555)まで。

(2003.02.26 民団新聞)

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