掲載日 : [2008-10-22] 照会数 : 5678
<女性コラム>普通の国の普通の人
ウサギは、韓国語でトキと言います。
日本人の夫といわゆる国際結婚をし、子どもが生まれてから私には大きな課題が発生した。
それは、子どもの言語を含め、アイデンティティーの問題をどのように教育すれば良いかの問題だった。
やはり、この夏、結婚後初の里帰りが実現した時も、日本語しか話せない子どもが心配だった。
だが、子どもは実家に着いた瞬間から、面白そうに、私の韓国語を真似したり、身ぶり手ぶりを使ったりして楽しくハラボジ(祖父)、ハルモニ(祖母)とふれ合っていた。
そして、日本に戻った次の日、ミッフィーの縫いぐるみを見つけて「ウサギはトキ」と、何度も口にするのを見て私はホッとした。
そうだ。アイデンティティーの問題は、子どもより、むしろ自分の悩みじゃないか。難しく考えて悩むより身近な単語から教えてみよう、と思い直した。
東南アジアの国々を20数年にわたって旅したあるジャーナリストが、著書で次のように感想を述べていた。「これらの国々は天国でも地獄でもなく、普通の人達が暮らす普通の国であった」
私は大きくうなずいた。私も、夫も、子どもも普通の国の普通の人である。そして、その「普通」の中に韓国があり、日本もある。そう考えてみた。すると、何だか肩が軽くなるような感じがした。
その日から、私は画用紙に韓国語を大きく書き、子どもに聞かせてあげることにした。そして、その第1頁はもちろん「ウサギはトキ」になりました。
鄭錦伊(埼玉・団体職員)
(2008.10.22 民団新聞)