掲載日 : [2008-11-06] 照会数 : 7655
<社説>釜山・福岡の超広域経済圏構想
韓日未来図創る先駆だ
釜山広域市と福岡市は31日、釜山市庁で「2009釜山‐福岡友情の年」宣布式を行った。より緊密な地域間連携モデルになろうとするだけでなく、国境と海峡を越えた超広域経済圏の形成を目指すこの動きは、韓日両国が必然的に辿り着く未来を先取りし、より豊かにする潮(うしお)となっていくだろう。
なぜ「対馬危機」
それだけに例えば、海峡のほぼ中央に位置する対馬と韓国、さらには在日同胞との関係をことさら扇情的に扱う日本社会一部の動向は残念である。産経新聞1面トップの「対馬が危ない」と題した連載記事や、そこで紹介された「真・保守政策研究会」の自民党議員らの発言のことだ。
同紙は韓国人観光客が急増している割に地元経済は潤わず、マナーの悪さにかえって迷惑していると報じたうえ、「長崎県対馬市が韓国資本に買占め」られ、「実効支配」が目論まれているかのように決めつけた。「真・保守政策研」の「緊急会議」で飛び出した「安全保障上、極めて重要な問題だ」、「地方参政権で実効支配してしまう可能性もある」との発言も紹介している。
こうした背景に韓国国会で今年7月、「対馬返還要求決議案」が発議されたことへの反発があろう。しかし、「決議案」は1回も審議されていない。韓国政府には対馬を自国領土と認識している気配さえなく、日本政府も問題にする考えはない。「決議案」への反発を割り引いても、許されざる報道・発言であり、「地方参政権」を持ち出す底意に至っては発言者とそれを許容する集団の質を示して余りある。
「買占め」問題について同紙は、麻生太郎首相からも「土地は合法的に買っている。日本がかつて米国の土地を買ったのと同じで、自分が買った時はよくて、人が買ったら悪いとは言えない」との答弁を引き出したに過ぎない。事実上も法理論上も、これ以上のコメントに値しない問題だ。「地方参政権」についても、有事の際仮に不都合が生じたにせよ、その上位にあって国民を代表する国会、つまり国権の最高機関が定めた法律の範囲内で運用・管理されるのは言わずもがなのことではないか。
「対馬」を韓日間の新たなトゲにしようとする人たちは結局、釜山・福岡が創り出すような大きな流れに飲み込まれていくほかない。両国はFTA(自由貿易協定)であれ、EPA(経済連携協定)であれ、動かない土地の代わりに物と資金、人とサービスを国の垣根を低くしてより自由に活かしていく方向から逃げられないからだ。
釜山市と福岡市は宣布式に先立つ20日、「釜山‐福岡超広域経済圏形成およびアジアゲートウェイ2011共同キャンペーンに関する宣言文」を公式発表し、「経済協力協議会」を発足させている。両市は来年が行政交流協定の締結から20周年になることを契機に、共同発展を目指す広域経済圏の形成に本格的に乗り出したもので、この構想は韓国東南部と全九州に拡大され、より効果的に推進される展望にある。
当面は市民交流や観光協力を主軸に、自動車部品と環境関連、映像・デザインやITなどの主要産業間の相互補完が可能な分野で、共同事業を段階的に策定・実施する方針だ。産学中継機関を活用した産学協力強化、海峡圏人材銀行の設立も構想に含めている。
すそ野も広がる
民間もこれを積極的に後押しする。30日には釜山市で、九州全域から29の市民団体が参加、「釜山‐福岡NGO交流協定」を結んだ。超広域経済圏形成を後押しするため、市民交流ネットワークを構築し、韓日文化体験プログラム運営、青少年交流の拡大のほか、体系的な交流支援に向けた広域市民交流センターを設立する。お互いの経済的な利益を確実にするためにも、共生・共栄の基盤をより広く整えようというものだ。
どこの国の歴史にも、時代に取り残されるがゆえに頑迷固陋に陥る例が必ずあった。その度し難い孤塁と事を構えて時間を浪費する必要はない。より大きなキャンパスに、韓日両国の将来像を見い出そうとする釜山・福岡両市の先駆的な試みを高く評価したい。両市の間にも制度的な障壁など懸案はある。しかし、個々の問題を全体の流れの中で解消し、小さな後退はあっても着実に前進を勝ち取ることで新時代は築かれる。
(2008.11.5 民団新聞)