コラム・特集 内容

 北送事業によって「帰国」した元在日同胞らがこのほど支援者の招きで日本を訪れ、朝鮮総連大阪本部と中央本部に対し申し入れ行動を行いました。

 これに対し朝鮮総連側は玄関の扉を固く閉め、応対を拒否しました。北送事業の実質的な推進母体であった朝鮮総連は、北送された当事者の声を真摯に受け止めるべきであります。

「地上の楽園」宣伝を信じ

 その機会を自ら放棄してしまった朝鮮総連のあまりにも誠意のない硬直的な対応に、同胞のあいだで失望感が広がっています。

 命がけで北韓を脱出してきた彼らを門前払いしてしまうのは、朝鮮総連の言葉を信じて「帰国」した彼らに対する裏切り行為以外のなにものでもありません。

 北送された多くの同胞は、朝鮮総連による「地上の楽園」との宣伝を心から信じていた、と彼らは訴えています。

 彼らが暮した北韓は「地上の楽園」などではなく、あらゆる物資が不足し、自由に物も言えず、移動の自由もなかった。

 「帰国」同胞は資本主義の日本から来たという理由で差別と監視に晒され、政治犯収容所に入れられたり、行方知れずになった人も少なくない、と言います。

 彼らは、極悪な食糧事情による餓死、病死から逃れ人間らしく生きるために北韓を脱出するしかなっかたと、脱北に至った事情を明かしています。

 北送事業は、北韓と結託した朝鮮総連が主導して日本の政府、赤十字社や政党、報道機関を巻き込み、民団の猛烈な反対運動を押し切って推進したものでした。

 当時、日本社会の差別と蔑視の中で同胞社会全体が閉塞状態にあったとはいえ、善良な在日同胞を北韓に追いやった朝鮮総連の罪と責任は重大だといわざるを得ません。

事態を直視し責任認めよ

 朝鮮総連は事業を推進した当事者として、また「在日同胞の権利を擁護する」と標榜している立場からも、彼らの訴えに対し責任ある態度を明らかにすべきではないでしょうか。

 「帰国」同胞の中から脱北者が続出する事態を直視し、「地上の楽園」との宣伝が間違いであったこと、北送事業が失敗であったことを率直に認めるべきです。

 その上で、北韓当局と協力して日本人配偶者を含む「帰国」同胞の安否と消息確認を行うべきです。同時に、北韓と日本政府に対しても、彼らが一日も早く日本との自由往来ができるよう働きかけるべきでしょう。

 約40年もの間、北送同胞とその在日家族に対し、地獄の苦しみを与え続けてきた朝鮮総連は、今こそ真摯な謝罪を行った上、彼らが人間的な生活を送れるよう、必要なあらゆる措置を速やかに講じるべきです。

(2003.03.12 民団新聞)

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