掲載日 : [2008-12-11] 照会数 : 5017
イルボンで出会いのエッセイ<18> 金益見
三歩進んで ハッピーが来た
とうとう博士論文提出期限の1カ月前に突入した。さんざん悩んで、たくさん壁にぶつかったが、実は最近、論文を書くことが楽しい。こんな気持ちは初めてで、自分でも驚いている。
本当のことを言うと、大学院に進んだことを後悔しない日はなかった。
同世代の人たちが就職してどんどん立派になっている中、自分だけ自立してなくて、いつまで経っても親のスネをかじっていると思うと、情けなくてどうにかなりそうだった。
じゃあ、なんで私は大学院に進んだのか。
インタビューなんかでは、「研究を深めたいと思ったから」みたいなことをライターさんがカッコよく書いてくれるが、自分の言葉でカッコつけないで書くと「褒められて嬉しかったから」だ。
卒業論文が教授に評価されて嬉しかった。大学院に進んで、もっと褒められたいと思った。それで博士号を取って、大学教授になれたら母が喜ぶと思った。
褒められて嬉しいとか、お母さんを喜ばせたいとか、参観日の小学生のような気分で、私は大学院に進学したのだ。
しかし、現実はそんなに甘くなかった。自分の力の無さと、世界の広さを知った私は、研究者になる器なんてないとか、文献が難しすぎて読めないとか、そもそも研究が好きじゃないとか〞向いてない〟理由を見つけては、何度も逃げた。
そしてその度、母や教授の顔を思い出して逃げ道をふさいだ。
大学院に進んでからは、逃げては戻るということの繰り返しで、まさに三歩進んで二歩下がるという日々だったように思う。だけれども、やめない限り景色は変わる。
少しずつ少しずつ、私は前に進んで、今ここまで来た。
そして、そこで待っていたのは、研究に夢中になっている自分だった!
私は博士論文提出直前になって、研究が好きになった自分に出会えたのだ。
何か好きになる時は、いつでも自然に好きになるものだと思っていた。
でも私は今、がんばって好きになれるものもあるんだということを知った。
この気持ちを忘れないでいたら、この先ものすごくたくさんのものを好きになれそうな気がする。
うおー! それってすごくハッピーだ。
(2008.12.10 民団新聞)