掲載日 : [2009-01-01] 照会数 : 4878
新成人に贈るメッセージ<金宗洙青年会長>
祖父母の歴史を胸に
閉塞感打破し自己実現を
新成人を迎えられる皆さん、誠におめでとうございます。
皆さんが20歳を迎えるに至るまで、ご家族をはじめ多くの方々の愛情や支えがあったことに改めて思いをはせ、感謝していることと思います。
成人とは、人生における大きな節目です。自身の学業・就業の課題、そして友人、恋愛・結婚問題など青年時代ならではの喜びや悩みに直面します。時には、これまでにない苦しい辛抱や挫折を経験するかも知れません。
しかし、それらを乗り越えることがまさに人生の醍醐味といえます。
私たち青年会は07年に結成30周年を迎えました。この間、在日同胞社会の先駆的役割を担い、「平和・共生」や「人道・人権」を訴え、数々の活動に尽力してきました。また、地域で暮らす住民として地域社会の発展へともに協力し、「多民族」や「多文化」の共生する豊かな社会の実現のために、日本の友人たちとともに日々努力を積み重ねてきました。
この30年の間に在日同胞社会も大きく変化し、3世・4世世代が中心になりつつあります。3世・4世の世代は国籍すら様々であり、個々人の意識はさらに多様です。
こうした現象は一面で、1世・2世世代の不断の努力によって日本社会での基本的人権がある程度確立されたからであり、在日同胞社会の成熟を示すものともいえます。
新成人の皆さん。
皆さんにはぜひ、アボジ、オモニ、さらにはハラボジ、ハルモニの歩んだ道のりを知ってほしいと思います。とりわけ1世は過酷な時代を乗り越え、日本社会で生活の基盤を作りあげ、在日同胞社会、日本社会、そして祖国の発展に多大な役割を果たしてきました。
そして、日本社会に定住するに至った在日2世、3世は、自己の民族的尊厳の回復と基本的人権の確立に懸命に取り組んできました。
私たちの誰もが、自分たちが脈々と続いてきた在日同胞社会の中から生まれ出たものであることを認識し、自らの立ち位置を確認する必要があるのではないでしょうか。
世界では戦争・紛争も止まず、経済危機は国境を超えて拡大し、環境問題が深刻化するなど「乱世」ともいえる状況のなか、新たな国際秩序の展望が示されないまま、閉塞感がいたるところに漂っています。若者が生きにくい時代なのかも知れません。
繰り返しになりますが、在日同胞は差別に打ち克ち、日本社会で懸命に生きてきた歴史を持っています。現在のような混沌とした時代、状況だからこそアボジ、オモニの歩みや歴史から私たちが生きていくための教訓やヒントが必ず見つかると思います。
そして何よりも青年の溢れる力、エネルギーを持って行動に移せば、皆さんがこれから直面するだろう難局さえも乗り切れるはずです。同じ境遇の仲間がいれば、さらに心強いでしょう。
新成人の皆さん。
「世に生を得るは事をなすにあり」という言葉があります。私たちは今を生きる青年世代・責任世代として、社会を変革する無限の可能性を秘めています。自己の可能性を信じ、自分を律して研鑽に励み、自己実現を果たそうとする皆さんを私たちは応援します。
(2009.1.1 民団新聞)