掲載日 : [2009-01-01] 照会数 : 5546
<年頭雑感今年はどうなる>2009年己丑
今年は、寒気の解けるのをひたすら待ち続ける年になりそうだ。その間、己(おのれ)らしさを見つめ直し、自己を磨き鍛えながらその寒気に耐え続けよう。その後、自分の指先、掌(たなごころ)から、僥倖をつかみ取る精気が漲(みなぎ)ることになるかもしれない‐‐。
キーワードは「待機」
今年、西暦2009年は、干支(えと、十干十二支)では、己丑(つちのとうし)である。十干と十二支の巡り合わせに見る今年の運勢とは、一体どのようなものなのか。
手を挙げる機会を待ち続ける
干支とは、中国で古代(紀元前2千年、殷の時代ごろ)から使われていた10進法の数詞(十干=じゅっかん)と、12進法の数詞(十二支=じゅうにし)の組み合わせだ。
十干は1から10までの数を表していた。今年はその6番目にあたる己(つちのと)。陰陽五行説では、己は「土性の陰」に当たる。土性とは、大地のように万物を保護・育成する性質を意味しているという。また戊(つちのえ)とともに五行の中央にあり、万物の中央、すなわち外にある他人に対して、自己、己(おのれ)の意となる。紀の本字とされている。一方、十二支の丑(うし)は2番目の数字である。五行ではこちらも「土」を表し、土のように動かずにひたすら待ち続けることと、その後の芽吹きの予感を含んでいる。
過去の丑年の主な出来事は?
丑の字は、「又」と「−」の合字で、又は右手を表し、−で3本の指をまとめて縛って寒気のために未だことを為し得ぬ様子を示す。さらに寒気が解けるのを待ち続けて、その後おもむろに手を挙げて仕事を始めるという意味をも表している。紐の本字でもある。
「己丑(つちのとうし)」の組み合わせが意味するものとは、今は己を見つめ鍛えながら、自ら手を挙げる機会をひたすら待ち続けるということである。世界中が未曾有の経済危機に襲われている今年、まさに「待機」の年といえよう。
丑年に起こった大事件としては、まず1973年8月の「金大中氏拉致事件」が想起される。東京・九段のホテルから、韓国野党・新民党(当時)の党首だった金大中氏が、韓国中央情報局により拉致され数日後自宅に戻された。
そのひと回り前の1949年は、第2次大戦後の混乱から、世界が東西冷戦の新秩序へ移行している最中(さなか)だった。前年の大韓民国、北韓の成立に続き、同様の分断国家、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)、ドイツ民主共和国(東ドイツ)がこの年に相次いで建国された。さらに、中華人民共和国も成立した。日本では、下山事件、三鷹事件などの謀略事件が頻発し、戦後の混乱が続いていた。
そのひと回り前の1937年、盧溝橋事件をきっかけとして日中戦争が勃発し、日本の本格的中国侵略が始まった。日本は日独伊防共協定に参加し、「枢軸国」が形成された。さらに一回り前の1925年、この年大正14年ごろまでは日本では大正デモクラシーを謳歌した時代で、平民宰相・原敬により「衆議院普通選挙法」が可決した。しかし同時に「治安維持法」も可決し、その後の暗い時代を先駆ける年ともなった。
一挙に古代に目を転じると、西暦65年に新羅が国号を鶏林と改め、209年には高句麗が国内城から丸都城に遷都した。どちらも長い待機の後に「手を挙げた」ものだ。 昨年後半からの経済危機は「100年に一度」とも言われている。干支が示す運命のように、今年は「待ち」の姿勢で、じっくりと自己や世界を見つめ直そう。
牛の背に無口な父の背を思い(在我)
(2009.1.1 民団新聞)