掲載日 : [2009-01-01] 照会数 : 6617
<中央団長新年辞>民団の真価発揮を
伝統と創意の結合を力に
経済活性 参政権獲得 組織強化
己丑の新春を迎え、全国民団の幹部ならびに団員の皆さん、そしてすべての在日同胞の皆さんに、謹んでごあいさつを申し上げます。
새해 복 많이 받으세요
国際社会は未曾有の金融危機に見舞われ、同時不況の荒波に翻弄されています。「100年に一度」と言われる試練の渦中でも、全国民団の幹部・団員の皆さんは、家族や従業員の生活を守りつつ、在日同胞社会の安寧と発展のために心血を注いできました。その労苦に心から敬意を表します。
試練に屈服せず
今年は幾重もの試練が待ち受けています。なかでも経済不況は、私たちの手足を縛り、心を弱くしかねません。しかし、全国の幹部・団員の皆さんはお互いに叱咤激励し合い、民団が同胞の結集軸であり続けるための課題に不退転の決意で取り組もうとしています。私は輝かしい歴史を持つ民団の、伝統の底力をひしひしと感じ、困難に立ち向かう勇気が湧き上がるのを覚えます。
敬愛する民団の幹部、団員の皆さん。
皆さんは昨年、2月の李明博大統領就任式に1000人規模で参席したのをはじめ、大韓民国建国60周年の関連行事、海外同胞の大規模行事、さらにはソウル幹部研修会への参加など、多忙を極めました。そして、不足しがちな財政に頭を痛めながらも、創意工夫を重ねて基本事業を着実に前進させ、時代が要求する新たな課題にも果敢に挑んできました。
第一に、建国60周年の韓国と民団との歴史的な紐帯を再確認し、同伴者としての信頼関係を再構築しました。
民団は李明博大統領をはじめ、新政府要路との協議を頻繁かつ密に行い、お互いの懸案について問題意識を共有してきました。韓国政府は韓日関係を未来志向に転換させ、共同繁栄を追求する立場からも、地方参政権獲得や在日同胞経済活性化に積極的な協力を惜しまないとの姿勢を明確に示しています。
第二に、衆議院の解散・総選挙を地方参政権獲得の天王山と位置づけ、各政党・議員、あるいは立候補予定者への働きかけを強め、日本の政界・社会に参政権問題と民団の存在を改めて強く印象づけました。
2月に全国地方団長ら160人の幹部が秘書を含む600人近い国会議員に一斉陳情したのを皮切りに、各地で連続開催されたシンポジウムや水面下での接触を通じて早期実現を訴えました。私たちは、今後もいばらの道が続くにせよ、くじけず前進すれば壁は突き崩せるとの手応えを得ました。
第三は、組織整備委員会を中心に民団組織の将来を探り、中央常任部署の統廃合はもちろん機構の合理的な改編を進め、スリムで効率的な組織に生まれ変わる道筋を示したことです。民団の存立基盤である同胞社会の実態と63年になろうとする活動経験を踏まえ、組織の在り方をタブーを排して論議してきました。
昨年の民団を特徴づけるものがもうひとつあります。それは、多文化共生社会を実現しようとする決意、民団をそれぞれの地域社会に欠かせない発展動力にしようとする強い意志を全面に押し出したことです。日本市民とともに各種行事を積極的に企画・推進したほか、恒例の「10月のマダン」はもちろん、本部・支部で相次いだ創団60周年式典、韓国建国60周年式典を地域の日本人社会とともに祝う祭典として成功させました。
自己犠牲の連続
敬愛する全国の民団幹部、団員の皆さん。
私は以上4点を確認したうえで、皆さんが携わった日常的な活動の成果についても触れたいと思います。
生活者団体である民団の業務は、オリニに対する民族教育から、青年会・学生会を中心とした次世代育成、同胞のカップル誕生を目指すブライダル事業、高齢者のための福祉事業、さらには過酷な時代に犠牲となった同胞の慰霊事業と多岐にわたり、枚挙にいとまがありません。その上に、財政の手当てと活動者の確保という重い課題を抱えています。活動の現場、現場における皆さんのそうした自己犠牲的な努力は、昨年も民団に多くの実績を残しました。
5回目のオリニ・ジャンボリーは言うまでもなく、2回目のMINDAN文化賞、2年目の「みんだん生活相談センター」、6年目の「脱北者支援民団センター」をそれぞれ充実化させました。3周年の在日韓人歴史資料館は初の移動展示・大阪特別展を実施し、合わせて図録『写真で見る在日100年』を刊行しました。民団の歴史を初めて映像化したDVD『ドキュメンタリー韓国民団』も完成しました。焼失した国宝・南大門の早期復元を願っての募金は、同胞ばかりか日本人、海外同胞の思いを集めて約6000万円に達しています。
力を貸し合って
敬愛する全国の民団幹部、団員の皆さん。そしてすべての同胞の皆さん。
在日同胞社会を取り巻く環境は厳しさを増し、民団はこれまでの伝統や実績にあぐらをかくことがますます許されなくなっています。
世界同時不況は基盤が脆弱な同胞経済を圧迫し、私たちの生活を脅かして、民団の財政基盤を揺るがしています。北韓体制の不安定化にともなう南北関係の悪化も、在日社会に波乱要因となりかねません。韓日関係においても、来年に併合100年を控えているばかりか、民族解放闘争の歴史的な節目が相次ぐことから、歴史認識をめぐる対立が再燃し、それが領土問題へと紛糾を広げる可能性を念頭におく必要があります。
まず、経済問題です。同胞経済の底抜けを防ぎかつ活性化させるためには、経済活動に従事する個々人の踏ん張りが第一としても、お互いに知恵を出し合い、力を貸し合い、励まし合うことが大切です。民団を中心とする同胞機関の後押しが欠かせません。
在日同胞の本国投資を促す一方、韓国資本の日本進出を助けるなど、韓国の「一流先進国」ビジョンに積極的に参与することで、政府の効果的な支援を呼び込みましょう。
また、韓信協(在日韓国人信用組合協会)に加盟する信組の経営基盤を強化するために、これまでの論議を踏まえて思い切った統合を促進する必要があります。同時に、日本に拠点をおく本国の金融機関との協調を強化し、資金供給の動脈を確保しなくてはなりません。
次に、南北関係です。民団は北韓に対して、韓半島非核化宣言に則って核兵器を廃棄し、韓国と国際社会の信頼を得ること、改革・開放を推進して住民生活を向上させることを一貫して求めてきました。李明博政府の「非核・開放・3000」政策を全面的に支持し、北韓が速やかに対話に応じるよう訴える姿勢は不変です。朝鮮総連の傘下同胞には改めて、民族的な良心と国際的な良識に基づいて行動するよう呼びかけます。
韓日関係についてはどうでしょうか。対立要因は幾つもあり、いずれも解決が容易ではありません。しかし昨年12月、独立した形では初めての韓日中首脳会談が実現し、韓日首脳会談では経済危機に対応して連携を強固にする枠組みがつくられました。今年は経済連携協定(EPA)の交渉が再開され、韓日関係の明るい未来を先取りする釜山‐福岡超広域経済圏構想も一歩を踏み出します。民団はこうした前向きな取り組みを、懸け橋としての豊かな経験を生かして後押しし、善隣友好の裾野を広げていきます。
不断に自己改革
敬愛してやまない全国の民団幹部、団員の皆さん。そしてすべての同胞の皆さん。
16年目に入る地方参政権獲得運動にとって今年は、乾坤一擲の勝負どころです。衆院の解散・総選挙がいつあってもいいように、年初からスパートをかけねばなりません。不偏不党の立場を堅持しながら、地方参政権の早期実現を確実にすべく、推進派議員が一人でも多く登場するよう、予断を排し、支援に全力を尽くしましょう。
活動力量を活性化させるための組織強化も待ったなしの最重要課題です。財政基盤の拡充に新規巻き直しで取り組むと同時に、組織機構の大胆な改革を推し進める1年となるでしょう。自己改革には困難がともなうとしても、私たちの、民団が民団であり続けようとする意志には強いものがあります。
伝統と創意の結合を図り、不断の努力と自己改革を決意する民団は必ず、在日同胞を民団中心に結集させ、祖国韓国と居住国日本と共に生きる同伴者として、揺るぎない存在にしていくでしょう。
今年が皆さんにとって、実り多き1年となるよう祈念しながら、新年辞といたします。
(2009.1.1 民団新聞)