掲載日 : [2009-01-14] 照会数 : 4970
イルボンで出会いのエッセイ<19> 金益見
「自分は特別な人間なんだ」とか「将来なにかすごいことができるはず!」とか思ったことないですか?
私はある。10代のころはそういう根拠のない自信でいっぱいだった。その自信が作り上げる未来のことを考えるだけで、ごはん3杯は食べられた。
しかし、自信はやる気に直結せず、もちろん行動もせず、毎日夢とお腹を膨らませて寝るだけ。私は夢とごはんを食べて生きるバク人間のようなものだったと思う。
では、今はどうだろうか。博士論文の口頭試問を目の前にして、現実と向き合う毎日。10代の時とは間逆の、現実と不安を食べて生きる日々だ。
気がつくと、「(博士号)取れるか取れないかわからないけど、がんばります!」が私の口癖になっていた。
そんなある日のこと。取材で大阪の某大学の在日教授にお会いした。インタビューも終わり、雑談していた時にいつもの私の口癖が出た。すると穏やかだった教授が少し強い口調でこう話されたのだ。
「取れるかどうかわからないと言って、逃げ道を作るのはよくないよ。博士号を取ります! と言って、そのために努力をすればいいじゃないか」
私は突然、怒られた気がして、首をすくめた。すると教授はにっこり笑ってこう付け加えた。
「よく考えてごらん。何かやりたいけど、何をやればいいかわからない人はたくさんいるんだよ。そんななか君は、やりたいこと、やらなければならないことを見つけた。人生にはね、今、力を出さなければいつ力を出すんだ! って時があるんだよ」
「君は今がその時だってわかっているはずだ。自分に与えられた時間を精一杯使っておもいっきりがんばってみなさい。努力はしんどいけど、努力できる機会を与えてもらったということは幸せなことなんだよ」
私は、行動もしないで何かできるかも知れないと思っていた過去の自分が嫌で、謙虚さを忘れてはいけないと常に肝に銘じてきた。
しかし、謙虚になることと、逃げ道を作ることは違うのだ。
今、力を出さなければ、いつ力を出すんだ!
出会いはいつも新しい考えの扉を開いてくれる。博士号、取ってみせるぞ!
(2009.1.14 民団新聞)