掲載日 : [2009-01-28] 照会数 : 9875
歴史資料館図録 東京で出版記念会
[ 謝辞を述べる歴史資料館の姜徳相館長 ]
反響広がる図録『写真で見る在日コリアンの100年』
「『同胞史』を語る一級品」
在日韓人歴史資料館の図録『写真で見る在日コリアンの100年』(在日韓人歴史資料館編著)出版記念会が24日、東京・港区の韓国中央会館で開かれた。在日同胞関係者と、図録の出版を心待ちにしていた日本人など約80人がお祝いに駆けつけた。出席者の中には初めて図録を手にした人たちも多く、興味深げに見入っていた。
本国への情報発信求める声も
東京の新小岩でサークル「韓国・朝鮮・在日と日本の歴史と文化を知る会」を毎月、主宰している同会代表の鄭宗碩さん(66)は「この本は在日を語るうえで第一級の資料となる。日本社会と韓国国内に在日の歴史を知らしめる出発点になるだろう」と語った。
これと関連、駐日大使館を代表して祝辞を述べた金賢中総領事も「同胞青少年はもとより、本国にもインターネットを通じて広報していくよう」訴えた。
『図録』は在日韓人歴史資料館の開館3周年を機に出版が実現した。活字による説明は極力少なくし、約700点に上る写真と、その時代にちなんだ文学作品からの引用によって「読者の想像力をふくらませる」(姜徳相館長)ことに力点を置いた。その意図は成功したようだ。出版元の明石書店関係者も「販売は順調に推移している印象」と明らかにした。
大谷大学教授の鄭早苗さん(京都、在日韓人歴史資料館理事)は、「どのページを見ても懐かしい。いまの若い人には目で見ることが大事。ある意味で在日はたいしたものだとつくづく思う」と語った。
また、8歳で渡日し、両親と北海道など各地の飯場を転々としてきたという安順伊さん(76、千葉)は、資料館に寄贈した「解放3周年運動会」「家族の肖像」など、3枚の写真が掲載された。安さんは「子どもたちに親の苦労を知ってもらうため、いつか本にしたかった。念願がかなった」と大事そうに本を胸に抱きしめていた。
高科憲勝さん(67)は第9章「解放の喜び・帰国」のページを開いて「播州平野」(1946年、宮本百合子)の一節を見つけ、うれしそうに語った。「宮本百合子は『蟹工船』を書いた小林多喜二の上を行くプロレタリア文学の第一人者だと思っている。この人を載せてくれたことで、この本の価値が最高に上がる」。
展示資料の充実を誓う
出版記念会席上、生涯教育博物館学が専門の君塚仁彦さん(東京学芸大学教授)は、「資料館は民団という組織力を基盤に運営されている。これは在日の皆さん自身による博物館運動として重要。歴史教育の場として存在意義は大きい。その成果を国公立の博物館にも反映させるのが私の仕事」とエールを送った。
資料館の理事長を兼ねる鄭進民団中央本部団長は「図録の完成で資料館が新たな段階に入っていく手応えを感じている」と述べ、今後とも展示の充実に力を入れていく考えを明らかにした。これまでにも力道山の写真など貴重な資料を提供してきた鄭大聲さん(滋賀県立大学名誉教授)も「もっと多くの資料を集めよう」と呼びかけた。
最後に姜館長が「資料館が麻布の名所となって観光バスが横付けになるよう目指す」と述べた。
会場では図録の出版を祝い、金順子さんが韓国舞踊を披露した。
(2009.1.28 民団新聞)