掲載日 : [2009-03-11] 照会数 : 6052
<布帳馬車>六本木の新羅明神坐像
東京の新しいおしゃれスポット六本木「東京ミッドタウン」にあるサントリー美術館で、3月15日まで「国宝 三井寺展」が開かれている。三井寺とは滋賀県大津市の古刹で、天台宗寺門派総本山である。もともとこの寺は、百済からの渡来氏族・大友氏が氏寺として建立、平安時代初期に遣唐使として入唐し、密教を学んだ円珍(えんじん)が帰国後に再興した。
858年、円珍の帰途、船上に老人が現れ、「我は新羅明神である。和尚と仏法を護る」と託宣し、円珍を三井寺まで導いたとされる。新羅明神は三井寺の鎮守神とされ、新羅明神社(国宝)が境内北部に建てられ、御神体として新羅明神坐像(国宝)が安置された。
天台宗山門派総本山の比叡山延暦寺にも、新羅明神と「双子」のような鎮守神がある。比叡山京都側山麓にある赤山明神のことだ。天台宗徒として円珍に先立って入唐した円仁(えんにん)がやはり帰国の際、海上でその難を救ったとされる新羅の神である。赤山明神とは、新羅の海神・張保皐(チャンポゴ)が、拠点の中国山東半島の赤山に建立した赤山法華院の守護神だ。円仁は張保皐の船で往復し、帰路、赤山に寄っている。円珍も新羅商船で入唐した。
遣唐使の航海は命がけだった。張保皐の守護神を、天台両派が競い合って建立したのもうなずける。鎮座する新羅明神坐像を眺めていると、新羅風の冠を戴いた印象的な面立ちは、張保皐その人がモデルではないか、そんな気がしてくる。(p)
(2009.3.11 民団新聞)