7大会連続出場の韓国…4強神話再現を
「4強神話」再現へのカギ
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W杯本大会出場を決め、スタンドのファンと喜び合う韓国イレブン |
サッカーの韓国代表が6日、2010年ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会のアジア地区最終予選B組で、アラブ首長国連邦(UAE)を2―0で破り本大会出場を決めた。
韓国代表のW杯出場は、1986年メキシコ大会から7回連続、54年スイス大会を含めると8回目となる。7大会連続出場は、アジアでは初。世界ではブラジル、ドイツ、イタリア、アルゼンチン、スペインについで6カ国目。今や韓国はW杯常連国となった。
韓国サッカーは以前と比べ大きく立場が変わった。過去、本大会出場そのものがひとつの目標であり、次いで初勝利、ベスト16進出が至上課題だった。しかし、02年韓日大会でこれをすべてクリアー。06年ドイツ大会ではベスト16進出は果たせなかったが、韓国は紛れもなくW杯ベスト4のの国であり、「サッカー強国」の体面から逃れられない。
許丁茂監督の目標は「まずはベスト16」。このため韓国代表は本番までの1年をいかに準備していくべきなのか。そして、どのような改善点が必要なのかを探る。
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20歳という若さながら得点を重ね、韓国サッカーの「皇太子」と呼ばれている奇誠庸(右) |
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世界に目線向けまずは脱亜意識
今現在、韓国サッカーの時計はアジアに合わせられている。許丁茂監督が07年12月、W杯代表チームの指揮を執
って以降、アジア以外の国との対戦はデビュー戦のチリだけだ。
その後は、W杯アジア3次予選と最終予選突入となり、アジア各国と死闘を展開した。
W杯本大会出場を決めた6日、許丁茂監督の第一声は「まずはベスト16をめざす」だった。
この当面目標をクリアするためには、アジアのレベルを越えなければならない。W杯では欧州と南米、アフリカなど世界の強豪と激突する。そのため、一日も早く「脱亜」し、「世界」に目線をおかなければならない。
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1試合でも多く強豪と評価戦を
まず急ぐべきことは強豪国とのテストマッチ(評価試合)を1試合でも多く計画することだ。それもできれば遠征が望ましい。
韓国にも「知彼知己、百戦不殆」(敵を知り己を知れば百戦危うからず)という格言があるように、強いチームを相手に何度も対戦し、鍛え上げることで、露呈した弱点を補っていけるからだ。
02年大会の直前、ヒディンク監督は、世界ランク上位のチームと数多くのテストマッチを行い、弱点を把握し、また、強豪国、特にそれまでの「欧州コンプレックス」を消し去った。
W杯本大会の対戦相手は、今年12月の組み分け抽選会で決まるが、強豪国との評価戦はこの前から積極的に組んで行くべきだ。
本大会が行われる南アフリカは韓国から遙か離れた国。しかも、アフリカ大陸初開催とあって、周辺国からも多くのサポーターが押し寄せてくる。韓国代表はこのアウエーの雰囲気を体得しなければならない。
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Jリーグでゴール量産中の李根鎬 |
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世代交代は成功 チーム再整備を
そしてチームの再整備も急がれる。W杯アジア地区予選での「許丁茂号」の最大収獲は世代交代だ。
奇誠庸、李青龍の「20歳コンビ」(ともにFCソウル)や、Jリーグで大活躍の李根鎬(24・ジュビロ磐田)などを中心に、代表チームの主力が大きく若返った。
しかし、これで満足しては韓国サッカーには未来がない。残す1年間、激しいポジション争いが必要だ。
ヒディンク監督が02年大会で「4強神話」を成し遂げた背景に最後の最後までポジション争いがあった。
世界のサッカーは時々刻々と変化しており、これに適応できなければ進化はない。
今後招集されるすべての代表候補選手に、競争力を養うための強い闘争心を持たせることが望まれる。
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決定力不足解消へ速いパスが必要
10日のサウジアラビア戦は慢性的とも言われる決定力不足が露呈した。急成長を見せている李根鎬、朴柱永、奇誠庸ら若手攻撃陣は、不必要なドリブルをしたり、ツータッチ、スリータッチでパスし、この時間の無駄によって相手の守備が整ってしまった。
欧州の強豪国やハイレベルのクラブチームは、1試合平均約600回パスをする。通常約400回のパスしかできない韓国はそれだけスピードが劣る。
ゴールは相手守備が乱れた状況で生まれることが多いが、守備を整える時間を与え、相手守備陣が密集した状態での攻撃は得点効率が劣る。
韓国はワンタッチ、ツータッチでのパス回しを身につける訓練が必要だ。
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安定した守備ラインの形成急げ
04欧州選手権で大番狂わせを起こし、初めて欧州王者に輝いたギリシアは「先守備、後逆襲」の徹底が効果を見せた。
06年ドイツ大会決勝でフランスを下したイタリアは伝統的な「閂(かんぬき)守備」が光った。また、08欧州選手権で44年ぶりに頂点に立ったスペインは後方をしっかりと守ったブラジルから帰化したマルコス・セナという傑出した守備型MFの存在が大きかった。
守備ラインがいかに勝敗の鍵を握っているかがうかがえる。
韓国サッカーでもすでにこの守備ラインを確立した経験がある。02年韓日大会で「4強神話」を創り上げた時の金泰映−洪明甫−崔鎮の鉄壁スリーバッグだ。
現在、許丁茂号の守備ラインは、いまひとつ心細い。特に中央守備が課題だ。この間、李正秀、趙容亨、姜敏寿、金致坤、黄載元、金珍圭、郭泰輝らをこの守備ラインに抜擢したが、ひとりとして根を張ることができなかった。
時間はまだまだ1年もある。金泰映−洪明甫−崔鎮の鉄壁守備ラインもW杯開幕を3か月前の欧州遠征で完成させた。
アジアではなく欧州と南米の突出した攻撃手と戦うには強固な守備ラインが望まれる。このためにも、今後の評価戦などで新たら「実験」が必要だ。
守備ラインが堅固でなければ韓国のW杯勝利への希望も薄い。
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欧州対策には体力+プレス
7大会連続出場の始発点である1986年メキシコ大会以来、韓国は過去6大会ともに欧州2カ国と同組となった。欧州の枠は今大会13カ国。「腐れ縁」となった欧州2カ国と同組になる可能性を意識すべきだ。
W杯遠征ベスト16進出のためには、欧州2カ国中、少なくとも1チームには勝たなければならない。06年ドイツ大会でフランス、スイス、トーゴと同組になった韓国は、初戦でトーゴを破ったがフランとスイス戦では1分け1敗となり、ベスト16進出に一歩及ばなかった。
欧州サッカーは、力強い体力でプレスを重視している。中盤の競り合いで押されれば、突破口が開けない。なおかつ韓国サッカーは客観的に欧州チームに比べて、個人技が落ちる。これをカバーする唯一の脱出口が体力+プレスだ。
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守備型ウィンガー、第2の朴智星育てよ
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「守備型ウィンガー」としてチームの柱となる朴智星 |
韓国が02年大会で欧州勢を倒し、「4強神話」を成し遂げた背景には、この二つがそろったからだ。
今の「太極戦士」の中でもそれができる男がいる。現在、マンチェスター・ユナイテッドに所属する朴智星だ。欧州で7年目のシーズンを送った朴智星は欧州チームの選手たちに決して見劣りしない。
その秘訣がまさに鋼鉄のような体力で、90分間、縦横無尽にグラウンドを走り回ることだ。
最前線でのプレスからはじまり、最終ラインまで戻ったかと思えば、ふたたび素早く先頭ラインに加勢し、しっかり得点する。センターフォワードもウイングもできる選手で、先月幕を閉じた08〜09シーズンでは英紙が「守備型ウィンガー(DWG)」という新概念プレーヤーに命名した。
W杯ベスト16進出へのカギは第2、第3の朴智星誕生だ。「許丁茂号」が過去のW杯チームに比べて、大幅に若くなった分、この方向で選手たちを集中的に訓練する必要がある。
本大会まで1年あるが、02年のように1年近く合宿することはできず、当時と比べ、代表招集合宿の機会も多くない。
許丁茂監督は今後、代表招集の毎に選手それぞれの特性を考慮した個別課題を与えることが大切だ。
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「まずはベスト16が目標」と語る許丁茂監督 |
(2009.6.17 民団新聞)