掲載日 : [2009-07-15] 照会数 : 9284
脱北2氏が講演 北送同胞の惨状知って
[ 北送同胞の悲惨さを語る姜哲煥氏(左)と高政美さん(右) ]
在日も傍観許されず
朝総連の責任、今も重い
北送同胞の2世で、現在「朝鮮日報」政治部記者として、また「北韓民主化委員会」運営委員長として活躍している姜哲煥氏、大阪生まれの北送脱北者で朝総連を相手取って大阪地裁で裁判中の高政美さん(元・新義州体育大教員)の2人を講師とした特別時局講演会が3日から8日にかけて開かれた。3日=大阪本部、5日=愛知本部、6日=中央会館(東京港区南麻布)、8日=新潟本部。
講演会のテーマは、金正日国防委員長の健康悪化の中での核再実験・ミサイル発射強行および3代権力世襲問題で改めて注目されている「北韓の実情」と今年で北送開始50年となる「北送同胞の悲惨な実態」。
姜哲煥氏は、「金日成死亡の94年以後、90年代だけで300万もの同胞が餓死したことは、500人を超える脱北者の聞き取りの結果、事実だと確信した。金正日は飢えに苦しむ同胞のための食糧輸入ではなく、自分の父親の遺体保存のために莫大な外貨を使用して、餓死を放置した。金正日を支援すればするほど国民が苦しむ」と指摘。「金大中前大統領は、かつて韓国の民主化に貢献したが、金正日を見識ある指導者だとして太陽政策の名の下に支援し、延命を助けてきた。金正日政権を一度も独裁政権だといっていない。その一方で、民主的選挙で選ばれた李明博大統領に対して独裁者だと激しく非難している」と指摘した。
9万3000人にのぼる北送同胞問題について姜氏は、「朝総連の宣伝、日本マスコミのキャンペーンに欺されず、民団同胞の北送反対・阻止の声に耳を傾けていたならば悲惨な事態を防げた」と述べ、「北送同胞の3分の1が政治犯収容所に送られた。それ以外の同胞も送金が途絶えた瞬間から乞食のような生活を免れない。朝総連は、自分たちが送り込んだ人々の悲惨な状態に無関心で無責任だ」と批判した。
同時に「民団同胞の皆さんには脱北者への支援と合わせて北韓の人権改善・民主化実現への支援・協力を望みたい」と呼びかけた。
高政美さんは、63年(当時3歳)に家族とともに北韓に渡った後、2003年に2度目の脱北に成功するまでの北韓での悲惨な体験を語った。
兄は入港時に日本に帰りたいといって下船を拒否し政治犯収容所に入れられ10年後に死亡。76年には父が労働党入党を拒否したことでスパイ視され、半年間、激しい拷問を受けた。95年には新義州地区でも餓死者が多数発生し35日間、死体処理に動員された。00年に家族3人で脱北を試みたが失敗、拷問を受けた。ようやく03年に成功。日本には05年に入国した。
父親について高さんは、「日本にいるときは総連の活動家だった。帰国事業にも携わっていた。北に行ってからは、そのことを反省し、自分の責任だったと、いつも話していた。また民団の人びとと会えたらあなた方が正しかったと心から詫たいと言っていた」と涙声で語った。
さらに「日本に戻ることができ、人権や自由がなにかをわかり、次世代のために何とかせねばと考えるようになった。日本にいる『北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会』の応援を受けて昨年6月、『地上の楽園』などと虚偽事実を広め北送事業を推進した総連を相手に、慰謝料など損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした」と説明、裁判への協力・応援を要請した。
(2009.7.15 民団新聞)