掲載日 : [2009-07-29] 照会数 : 4853
<布帳馬車>大牟田駅の駅員さん、ありがとう
ある日の午後7時、青年会中央本部の電話が鳴った。JR大牟田駅(福岡県)の若い駅員さんだった。
唐突に「韓国語はできますか?」と聞かれた。切羽詰った雰囲気だ。「はい」と答えると、ホッとしたように事情を話してくれた。
若い韓国人男性の旅行者が周遊キップを落としてしまい、駅の窓口に来ているという。どうにか解決策を見出したいが、言葉が通じないので細かな話ができず、途方に暮れているというのだ。
私が通訳として間に入り、奇妙な三者通話が始まった。駅員さんはとても親身になって八方に手を尽くしてくれた。しかし、結局万策尽きて、旅行予定を変更せざるを得なくなった。旅行者の落ち込み様は電話口からも伝わってくる。
「良い思い出を作って帰ってもらいたい。何も力になれなかったけど、元気づけてあげたい。韓国語で何て言えば良いのでしょうか?」と若い駅員さんが聞いてきた。旅行者には気の毒な結果になってしまったが、その温かい気持ちはきっと伝わったはずだ。
私が数年前に、ソウル留学から日本に戻る時に日記に記した韓国への言葉を思い出した。
「この国で出会ったすべての人に感謝。そして訪れるすべての人がこの国を愛してくれますように」
駅員さんの対応はきっと旅行者の心を打っただろう。その彼がいつか、韓国で困っている日本人旅行者を見かけたとき、親身になって力を貸すことになればと思う。(G)
(2009.7.29 民団新聞)