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 春の甲子園でひとりのベトナム国籍球児が注目された。東洋大姫路高校のエース、アン投手だ。

 優勝は逃したが準々決勝で花咲徳栄と延長15回の死闘、引分け再試合、4連投……。その注目度は間違いなく今大会の主役だ。

 フルネームは、グエン・トラン・フォク・アン。両親と3人の兄姉は84年、ベトナム戦争後で混乱が続くホーチミン市を脱出したいわゆるボートピープル。アン君は長崎県内の難民センターで生まれた「在日2世」だ。生後、兵庫県姫路市に移り、兄に教わった野球にのめり込んだ。

 カタカナの「アン」という本名ゆえに、時にはからかわれたこともあっただろう。しかし、本名で堂々と生きた彼には祖国を愛するプライドを感じさせる。

 思い出すのは81年、第63回夏の甲子園。報徳学園対京都商業の決勝で沸き起こした在日コリアン旋風だ。

 両校あわせて7人の在日同胞球児が活躍し全国の同胞を釘付けにした。スコアボードには鄭、韓との韓国姓を含め呉本、高原、金村、西原、岡部、金原などおなじみの通名がズラリと並んだ。

 サッカー、野球、相撲、プロレス、ボクシング……。今や日本のスポーツ界に同胞がいない競技を探すのが難しい。春の甲子園でも同胞球児は存在したはずだ。残念ながら、「本名」選手は見あたらなかった。

 新学期が始まった。本名で通う在日同胞は増えているのだろうか。(J)

(2003.4.16 民団新聞)

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