掲載日 : [2009-09-16] 照会数 : 7732
<社説>SBJ銀行と韓信協に望む
相互補完へ協調めざせ
新韓銀行が100%出資した日本法人、「SBJ銀行」が営業を開始した。SBJとは言うまでもなく「Sinhan Bank Japan」の頭文字である。新韓銀行の系譜をよすがにすることで、SBJと韓信協(在日韓国人信用組合協会)の会員組合が協調的な相互補完関係を築き、ともに業績伸長を果たすよう期待したい。
躍進に次ぐ躍進
1982年7月に資本金250億ウォン、3店舗でスタートした新韓銀行は、徹底したリスク管理と顧客満足度を追求する斬新なスタイルで飛躍的な成長を遂げた。97年のIMF外貨危機の際にも黒字を計上し、昨年来の米国発金融危機にあっても揺るがないなど、一貫した堅固さを誇っている。
スケール拡大の足跡にも驚く。01年には持株会社に転換することで総合金融グループへの土台を整え、03年には名門・朝興銀行を吸収、総資産を150兆ウォン台に乗せるとニューヨーク証券取引所に上場、07年には会員1000万人を有する韓国最大規模のLGカードを買収した。新韓カード、新韓生命、新韓キャピタルなどグループ全体の総資産は、持株会社設立時の3兆3000億ウォンから313兆ウォンへと躍進した。
この資産規模は韓国の金融グループで3位ながら、市場の高い評価を得て時価総額では1位を占める。まさに、韓国を代表するアジア有数の金融グループとして地盤を固め、世界を視野に新たな成長戦略を描いている。
数々の神話に彩られてきた同グループだからこそ、その基礎ともなり中核ともなってきた新韓銀行の持つ、世界にあまたある先進的な銀行の中でもきわめて特異な生い立ちを忘れてはならない。
常に原点意識を
新韓銀行は、韓国初の純粋な民間資本だけの銀行であり、しかもそれは、特定の大規模資本を排除した341人の共同参与によった。しかし、ここまでなら珍しくはない。同行の最たる特徴は、出資者の全員が在日韓国人だったことだ。旧支配国の日本で生きるために、筆舌に尽くせぬ辛酸をなめてきた同胞たちが結束し、経済の力と粋を集めて錦衣帰郷を果たしたのである。
在日同胞は出資しただけでなく、経営理念と戦略・戦術も持ち込んだ。「両班(ヤンバン)経営」と揶揄されるほどに居丈高だった韓国金融界に、新韓銀行の顧客を敬い重視する徹底したサービス精神は革命的な新風をもたらした。大きな役割を果たしたのは、在日民族金融機関で最大手信組の鍛えられた経営・営業ノウハウであり、研修プログラムであった。
新しい経済韓国を創ろうとした新韓銀行には、祖国の経済発展に貢献しようとする大目的とともに、二つの付随する目的があった。一つは、本国内で冷遇されやすかった在日同胞進出企業への資金供給源となることであり、もう一つは、いずれ日本に設立する在日同胞の銀行と連携し、韓日両国をまたぐ銀行グループをつくることだった。
しかし、時は無慈悲に流れた。同胞経済を支え新韓銀行設立に大きな役割を果たした韓信協組合は、経済バブルの崩壊と金融構造の改革などがボディーブローとなって、90年代後半から相次ぐ破綻に見舞われた。最盛時には全国で39組合、預金量2兆8千億円を誇った韓信協は現在、7組合で預金量5360億円、近畿産業信組を含めても1兆2千億円を下回る。
協議機構設置も
韓信協会員組合は現在、生き残りをかけて合併・統合を目指している。SBJに対して期待と警戒感が相半ばするのは否定できない。しかし、両者に求められるべきは、相互協力関係にあることを鮮明にし、それを迅速に具体化していくことだ。
融資限度額など様々な制約がある信組の弱点を補い、SBJには新規開拓につながる協調融資の実行や、相互利益となる共同商品の開発を求めたい。何よりもまず、情報交換と業務協力のための常設会議の設置が必要となろう。
私たちは2000年代初、民族金融機関の再生には銀行設立以外に道はない、との統一意思を形成しながらも、韓信協組合の合併による転換方式か、まったく新しい不良債権ゼロの受け皿方式かをめぐって葛藤を続け、民族信組をいっそうの窮地に追い込んだ苦い歴史があることを忘れていない。
スケールもノウハウも豊かで、在日同胞への恩返しを忘れていない新韓銀行を背景とするSBJと、日本全国にくまなく店舗網を張って多くの顧客を抱え、現場をよく知る韓信協組合は、協調・相互補完関係を築くことで共存共栄への条件を固めていくことが可能だ。苦境にある同胞経済界は、それを切実な眼差しで見つめている。
(2009.9.16 民団新聞)