掲載日 : [2009-11-18] 照会数 : 5834
<寄稿>在日も心一つにお点前 花開いた大茶会
[ 金瑪璃韓国茶道協会福岡支部長(左)らによるお点前
]
福岡茶道連盟主催 各流合同茶会に参加して
韓国茶道協会福岡支部総務 金英子
今年の秋、私たちは緊張と不安の中にいた。毎年11月3日に催される大茶会に参加することになったからだ。
これは福岡茶道連盟が主催する各流合同茶会といって、表千家、裏千家など日本の各流派がお茶席を設ける。福岡市民芸術祭の一環で、茶道関係者から一般の方まで千人単位の来場者がある大規模なものだ。
ことの起こりは「福岡−釜山友情年」である。福岡は地理的に韓国に近い。特に釜山とは玄界灘をはさんで飛行機なら1時間弱。高速船でも3時間なので、多くの人々がゆききしている。
韓国に関わる市民団体も多数あり、今年は福岡市と釜山市の行政交流20年を記念した様々なイベントが行われている。そこで、釜山に本部を置く韓国茶道協会の福岡支部である私たちも大茶会に加わる運びになった。
福岡支部は、日本では東京、京都に次いで本年1月に発足した。昨年1年間は茶道サークルとして毎月釜山より鄭恩淑先生をお迎えして学んでいる。それでも稽古を始めて2年に満たない。
11月の合同茶会は、その規模もさることながら、日本の各流派は準備に長期間をかけ、ベテランの教授陣がお点前を行う。一方、私たちの支部は発足したばかり。これまで2度お点前を披露する機会があり、良い感触を得たものの、韓国茶道はまだ知られていない。
会員数もそれほど多くない。会員の数倍はお手伝いの方が必要となるが、どのように集めるのか、割り当てられたチケットはさばけるのか、何より多数のお客さまの前で立派なお点前ができるだろうか、緊張と不安が増すばかりではあるが、金瑪璃支部長が先頭に立ち、手探りで準備を進めていった。
そして迎えた大茶会。全てはうまくいった。前日の夜には県内ではひょうが降り、当日の天気予報はこの秋一番の冷え込みになるとのことだったが、日差しとともに気温もまずまず上がった。各流派の会場は福岡市の大濠公園とその付近に点在している。私たちは護国神社の参集殿だ。
この日は50人のお客さまを迎えるお茶席を10席まで行った。秋の花を飾ったテーブル席は、1席から既に満員である。最前列の席で、当初から物心両面で支援して下さっている宣虎采顧問が見守っているのが心強い。
600人が2時間待ち
韓国の伝統音楽が流れるなか、舞台では秋色の美しい韓服に身を包んで優雅な茶礼が進む。1度に50人となると水屋すなわち裏方はたいへんだが、こちらもスムーズに進んだ。お客さまの多くは日本人で、会員たちが韓国から取り寄せた伝統茶と干菓子を運ぶと、飲み方とか干菓子についての質問や、あんな韓服が着てみたいとの声が上がった。昼前には入場は2時間待ちとなり、来場者は600人にのぼった。 この日私たちを支えたのは、日本人の交流の心と本国の情である。福岡の茶道界には従来韓国と交流している人がおり、福岡支部の会員にもなっている。その関係者が大勢駆けつけてくれた。釜山からは仁順先生とともに本部役員と教授方が来福なさった。
こうした心と韓国に縁の深い福岡で韓国茶道をという私たち在日の思いがひとつになって花開いた一日であった。
福岡支部の今後の活動はこれから皆で決めるが、個人的には在日同胞の子どもたちに見てほしいと思っている。
(2009.11.18 民団新聞)