掲載日 : [2003-06-25] 照会数 : 4708
<社説>元在日同胞脱北者に支援を
北送事業によって北韓に「帰国」しながら、脱北を決意し命からがら再び日本に戻ってきた元在日同胞が、すでに50人前後に及んでいるといわれています。
北韓での「帰国同胞」に対する抑圧状況がなんら改善されず、なおも極悪な食糧状況が続くようだと、さらに多くの元在日同胞が北韓を脱出し日本に戻ってくることが予想されます。
待たれていた支援の輪
このような人々を暖かく支援しようと民団が「脱北者支援民団センター」を設置してから3週間が過ぎました。
支援センターの設置が報道されるや、各方面から大きな反響がありました。センターには激励の電話、手紙をはじめ求人の申し込み、ボランティアの志願や資金カンパの申し出が数多く寄せられ、担当者を喜ばせました。
元在日脱北者本人からも困っていることや悩み事の相談が寄せられ、彼らがいかに支援の手を待ちわびていたかをうかがい知ることができます。
支援センターでは、定着への第一歩として住居と就職の斡旋を最優先課題に挙げる一方、日本語を理解できない北送2世らに対する言語教育も大きな課題として挙げています。
日本に戻って長い人でもまだ数年、ほとんどの人が3年以内で、日本社会に適応するのがまだまだ困難な状況にあります。一例をあげると、自由主義社会での生活感覚や「カリスマ」「メディア」などカタカナ語をまったく理解できなかったとのことです。
本来は総連が行うべき
元在日脱北者たちは日本に戻ったものの、日本社会に定着するために必死に苦しみもがいているのです。
彼らに対する支援事業は、本来なら朝鮮総連が率先して行うべきものです。〞地上の楽園〟との宣伝を大々的に行い、9万3000人以上もの人々を「帰国」の道に追い込んだのは、まさに総連だったからです。
北送事業は北韓当局と結託した総連が日本政府、赤十字社や政党などを巻き込んで推進したものでした。総連は事業を推進した当事者として、脱北者に限らず「帰国者」全員に対し責任を持つべきなのです。
民団はむしろ北送事業に猛烈に反対した立場ですから、元在日脱北者に対し道義的責任はありません。しかし、困っている同胞を目の前にして知らない振りをするわけにはいきません。
同じ歴史的背景を持ち、一時期とはいえ日本社会で生活をともにした同胞としての情愛と、困っている同胞を「なんとかしなくては」との人道的な立場から民団は支援センターを立ち上げたのです。
元在日脱北者の支援に対する朝鮮総連の真摯な対応が待たれますが、一方で私たちは早急に全国的なより幅広い支援の輪を作り上げていかねばなりません。
(2003.6.25 民団新聞)