民団人の気骨を今こそ
統一へ参与果敢に…在日社会の実質統合に全力
親愛なる団員の皆さん。
在日本大韓民国民団は結成65周年を迎えました。私たちは、自己犠牲をいとわず、本団の創立・発展に心血を注いだ先輩世代の功績に思いをはせると同時に、現在と未来に責任を負う現役世代として、在日同胞の求心体である本団の気骨を全面に押し出す決意を新たにすべき筋目に立っています。
教訓と知恵の宝庫
本団は光復から1年余、大韓民国の建国に先立つこと2年弱の1946年10月3日、在留同胞の保護と新祖国建設への参与を目的に、「在日本朝鮮居留民団」として出帆しました。大韓民国の樹立を受けて「在日本大韓民国居留民団」に改称し、創団50周年の96年、永住者の立場を鮮明にすべく「居留」を削除して今日に至りました。
紆余曲折の連続だった本団の歴史には、1世から2世、そして3世に至る団員個々人の人生が投影され、喜怒哀楽が敷き詰められています。この65年の軌跡は、単なる感懐の対象にとどまらず、4世、5世のこれからを指し示す教訓と智恵の宝庫と言えましょう。
日本帝国による植民地支配と戦争遂行政策によって、強制もしくは半強制的に渡日し、解放後も帰国を断念せざるを得なかった同胞たちの自治組織として誕生して以来、本団には東西冷戦の激化と祖国分断にともなう同胞間の葛藤や、日本の行政的・社会的差別に苦しむいばらの道が続きました。
しかし私たちは、団勢の拡大を怠ることなく在日同胞の総結集体を目指し、在外国民・同胞団体として大韓民国の雄飛に貢献する一方、多文化共生を志向する地域住民団体として各種差別を撤廃・解消しつつ、日本の発展に寄与してきました。祖国と日本において堂々たる地位を築き、なおかつ韓日両国の懸け橋となってきたことは自負すべきです。
本団は草創期から1970年代前半まで、内外の要因による紛糾や混乱が相次ぎ、指導部が不規則に代わることも珍しくありませんでした。たびたび存亡の危機にも見舞われました。これは、特別な中核部隊をもつことのない、生活者の集合体である本団の宿命的な弱点です。
それでも誇り得る実績を残せたのは、人徳と見識のある自己犠牲的な指導者が次から次へと現れたからです。混乱はあってもエネルギーに溢れた草創期、苦難を克服しての躍進期、そして再躍進を期す改革期と時代は変転しても、立ち上がる同胞は途切れませんでした。
訓練された正規軍を持たない代わりに、危急に面しては決起せずにおかない義兵の精神が横溢していることこそ、本団の真骨頂です。数知れない指導者が民団に骨を埋め、文字通り屋台骨となったのです。心の底から感謝の念が湧き上がります。
「生活人」のモラル
親愛なる団員の皆さん。
こうした本団の特性は、私たちが今なお敬意を抱く創団精神を源泉としています。
解放直後から活動していた同胞団体が主なものだけでも300余を数えるなか、1945年10月、思想・信条、主義・主張を超えて全同胞が結集し、在日朝鮮人連盟(朝連)を発足させました。しかし、大同団結は一瞬の幻に終わったのです。共産主義者が指導部を掌握した朝連と、それを継承した在日朝鮮統一民主主義戦線(民戦)は、民族問題を日本の階級闘争に従属させ、日本革命の成就なしに自らの真の解放はないとして、同胞を過激な政治運動に駆り立てました。
国家による保護を望むべくもない寄る辺なき民にとって、唯一の拠り所である民族的な共同体を日本革命のいけにえにする勢力を野放しにすれば、自己破滅の道しかありません。この危機意識から敢然と立ち上がったのが民団人です。
創団の主体となった同胞たちは、大同団結と民族的な課題の遂行を最優先に掲げ、そのためにも、本団を思想・政治団体にあらずと自己規定して特定の主義・主張とは一線を画し、「生活人の正しき信念」に基づいて「普遍的な信義を尊重する国際人」たろうと欲したのです。
いま振り返っても、在留同胞の民族的な誇りと生活を同時に守る実に賢明な決断でした。「生活人」・「国際人」は、草創期の団員が自らを戒め、鼓舞するだけでなく、その後も一貫して民団人を律する信条となりました。それは朝連、民戦、そして朝鮮総連という、北韓に従属する系譜と本団とを決定的に分かつモラルの核心なのです。
親愛なる団員の皆さん。
本団は再び賢明な選択を迫られています。在日同胞社会の与件は、劇的な変動さえ予想されており、過去の実績や成功方式だけに安住してはいられないからです。
韓半島の分断構造は、明らかな地殻変動期にあります。南北間の格差拡大が著しいにもかかわらず、住民の生活と命を犠牲にした先軍政治と3代世襲の強行は、北韓独裁が奈落の淵にあることを示すものにほかなりません。統一に向かう新秩序の形成を求めるエネルギーはかつてなく強まっています。
より高い政治性を
こうした韓半島を取り巻く東アジアの情勢は、領土や資源、あるいは歴史認識をめぐって波頭を高めるばかりです。韓国と日本の関係は成熟化しつつもなおアツレキが消えず、この両国と中国、ロシアは北韓を変数として複雑に絡み合い、東アジアは軍拡時代にあるといって過言ではありません。日本でも、国家主義的な傾向の強まりが憂慮されています。
在日同胞は政治的にも経済的にも、状況悪化の影響を真っ先に受け、ときには圧迫、排撃の対象ともなってきた経緯を忘れていい状況にはありません。
「団結しなければ生き残れない」。この命題はいまも生きています。本団には過去、組織が弛緩した時期もあれば団結力を縦横に示した時期もあります。06年には、民団と総連を野合させ、本団を北韓独裁の従属団体に転落させようとする5・17事態がありました。これを招いたのは組織が緩んでいたからであり、これを克服できたのは危機に目覚め、本来の団結力が働いたからです。私たちは目的意識を同じくしたとき、とてつもない底力を発揮してきました。
先行き不透明な時代にあって、私たちが自分の立場を堂々と主張し、進路を開拓するためには、より高い政治意識をもつ堅固な隊列を整えねばなりません。一寸先も読めない混沌とした時代に、賢明な判断のもとに非力をいとわず漕ぎ出した創団時の精神、その民団人としてのDNAを覚醒させるのです。
韓半島はいま、全民族の将来を決し、私たちの未来を決定する正念場にあります。先進統一祖国の建設を担う大韓民国の歴史的使命は、いつにもまして重く、在外国民として来年の2大国政選挙から投票権を行使し、統一政策をはじめ国の行方を左右する有権者となった私たちの責務もまた、かつてなく重大です。
希望の時代開こう
本団は、団員の多くが個々の信条に基づいて国政選挙に参与するよう督励する立場にありながらも、組織としてはいささかの迷いもなく不偏不党を貫きます。しかし、北韓独裁に従属しながら、大韓民国の正統性を否定し、憲法秩序をないがしろにする勢力は決然と排除するものです。本団はさらに一歩進んで、全民族の熱望である先進統一祖国の建設により明確な意思をもって積極参与し、その意思のもとに在日同胞社会を実質的に統合していかねばなりません。
私たちは、社会的な弱者であることに変わりなくとも、創団時に比べればはるかに強い運動基盤を持っています。祖国・大韓民国が存在し、しかも強国として国際社会で確固たる地位を占めています。歴史が培った本団と祖国の紐帯はこれからも不動です。日本社会においても、地域生活者の国際団体として認知され、その共生理念は多くの地方自治体や市民社会に共感を広げてきました。そしてなによりも、風雪に耐え同志的なつながりを固めた組織が全国にあります。
在日同胞社会の構成主体は多岐にわたり、したがって価値観も多様です。本団にはこれを力に変換する智恵があります。大韓民国国民として代を重ねる団員を中心に、次世代を育成しつつ日本国籍取得者、新規定住者など多様な同胞を幅広く結集し、困難を押し分け、その先にある希望の新時代に向かって邁進しましょう。
(2011.10.5 民団新聞)
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