総武線の亀戸駅(東京都江東区)近くの小さな公園に、大きな親ガメの背中に中くらいの子ガメ、子ガメの背中に小さめの孫ガメが乗った高さ3㍍ほどの像がある。顔つきはなかなかに凛々しく、それぞれの甲羅には羽がついていて、代を継いで羽ばたきを大きくし、孫ガメは今にも空に飛び出そうとしている。「ハネカメ」と呼ばれ、「亀戸地区が未来に向かって羽ばたくように」との願いが込められているという。
だが、亀と言えばそんな勇壮さよりは、甲羅の中に閉じこもる姿がどうしても思い浮かんでしまう。かなり古い話になるが、タクシー業界に対する日本当局のきびしい規制に反発し、白ナンバーでタクシー営業を敢行する団体があった。警察の取り締まりに合うと、客を乗せたままでも長時間の車中籠城を決め込む。これを「亀の甲作戦」と称した。
ほかでもなく、3代世襲の北韓のことだ。百戦百勝の労働党による一党支配が66年余も続き、世界が称賛してやまない不出世の領導者が代を継いだのだから、3代目ともなればハネカメとなって、未来に飛び立ってもよかったはずである。
目に映るのは、水中を自由に泳ぎまわることもできず、身を守る甲羅さえひび割れているのに、外部世界を恐れて「亀の甲作戦」を踏襲する無残さだ。しかも3代目は、称賛の呼称が世界で1200種を超えるとされる偉大な2代目の甲羅を、よりいっそう飾り立ててその中に潜り込むほかないらしい。
北韓恒例の新年共同社説は、初代をはるかに上回る2代目への讃辞で溢れた。3代目を際立たせる賛辞は、もう容易にはひねり出せないはずである。(J)
(2012.1.18 民団新聞)