掲載日 : [2003-08-27] 照会数 : 3877
<コラム・布帳馬車>まずは一歩を踏み出そう
知的障がい児数人が、大きく肩を揺らしながらサムルノリのリズムに体を合わせている。その姿を会場の後から見つめていた。
ケンガリのような耳をつんざく音は、自閉症児らには刺激的すぎて、いたたまれないのではないか、という心配は杞憂に終わった。
8月9日の夜、湘南の地方都市で開かれた障がい児らのためのチャリティコンサートでの話である。
そのコンサートは今年で3回目を迎えたが、恒例のジョン・チャヌさんのヴァイオリンに加えて、初めて趙寿玉さんらによる韓国舞踊と伝統楽器の演奏もプログラムに取り入れた。
日本人拉致問題以降、険悪になっている北韓と日本の関係が、在日同胞と日本人の間にも微妙に影を落とし、お互いに後ろ向きになっている不幸な状態を何とかしたかったからだ。
子どもたちも大人も、隣国の伝統文化に触れ、新鮮な感触を得たようだ。どの子どもも会場から飛び出したりしなかった。目を細めて感想を述べ合っている老夫婦もいた。韓国舞踊見たさに、福祉施設の外出許可を得てわざわざ小田原からやってきた1世もいたらしい。
台風の影響にもかかわらず、お客さんの入りは9割を占めた。障がい児と健常児のノーマライゼーション、在日と日本人との共生。臆する前に、まずは一歩を踏み出すことが大切だと再認識した夜だった。
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(2003.8.27 民団新聞)