残忍な体制頬被り…持ってほしい「恥を知る心」
総連機関紙副局長のハンギョレ紙寄稿
事実隠蔽し説教まで
「歴史の現実が示しているように、北の人々は(南北)首脳合意から外れたり統一原則に反することに反対し、相手を否定したり自分のものを強要してはならないということを肝に銘じている。南の人々が念頭に置くべき部分だ」
韓国の「ハンギョレ新聞」日本語電子版(3月3日)に掲載された総連機関紙「朝鮮新報」の金志永副局長兼平壌支局長の寄稿「資本主義経済・社会主義経済、二者択一でなく共存を模索すべき」中の一節だ。
「北の人々」と表現し、あたかも彼らの考えや思いを客観的に伝えているかのように主張していることに強い怒りを覚えた。現実を隠し、しかも「南の人々」に説教をたれているからだ。
ハンギョレ紙の連載企画「統一大当たり論を越えよう②北も統一の主人公だ」に総連の朝鮮大学校の朴在勲准教授の寄稿とあわせて掲載されたものだが、「北の人々は、他国に依存することなく自分の力を信じて自分の足で歩んできた」とし、「統一は『北の人民』と『南の国民』が一緒に作っていく、前人未踏の道を行くことになる」とも主張している。
そもそも北韓の体制はどのようなもので、「北の人々」の境遇はどのようなものだったか。
金日成・金正日・金正恩3代世襲による王朝体制下にあり、自由民主体制下の「南の人々」とは対照的に、「北の人々」には多様な生き方は許されず、自由な意思の表明は、過去はもとより、現在も一切認められていない。
北韓は最高法規である労働党規約とそれに次ぐ憲法の上に君臨する金日成絶対化の「最高の戒律」であった「党の唯一思想体系確立の10大原則」を、金正恩時代に合わせて昨年6月、「党の唯一領導体系確立の10大原則」へ改定した。
3代世襲を絶対化するためで、「全社会を金日成・金正日主義化するために身を捧げて闘わなければならない」(第1条)と明記している。
これに先立つ12年4月の党規約改定と憲法改定でも、「金日成・金正日主義」への帰依を要求、金正恩の「唯一的領導」に従うことを命じている。このように、金正日死亡後には金正日を金日成と同列に並べて神格化すると同時に、金正恩への無条件・絶対忠誠を「北の人々」に厳しく課している。
「北の人々」「北の人民」の境遇は、与野党・無所属を問わず日常的に政治活動が保障され、複数の人々が立候補し、自由・秘密投票で大統領、国会議員、地方自治体首長・議員らを定期的に選ぶ「南の人々」「南の国民」とは対極にある。
金王朝の存続正当化
韓国では、定期的な各種の公的選挙に加えて、メディアをはじめ各種機関・団体によるさまざまな「世論調査」が実施され、そのつど国民の多様な声を知り、「民意」の集約が求められる。
だが、北韓には民主主義など、かけらも存在しない。独自の思考は危険視され、指導者批判は政治犯収容所送りだ。世界最悪の人権状況にある「北の人々」は24時間監視され、金王朝への絶対服従を強いられている。
金志永副局長の「北の人々」論は、「北の人々」の実態からかけ離れ、「南北の統一」にとって何が本当の問題であり障害となっているのかを隠蔽、金王朝の存続を正当化するための政治的宣伝の一環にほかならない。
ちなみに総連の許宗萬議長は、金日成と金正日を「祖国と民族の永遠の父君」と称賛し、3代目をも「統一の救星」「最高の領導者」と呼び、機会あるごとに「敬愛する金正恩元帥様への無条件忠誠」を「総連の活動家および在日同胞」の名で誓っている。在日同胞を愚弄するにもほどがある。
(2014.3.19 民団新聞)