「北韓政権の人権抹殺をこれ以上放置してはならない」とする国連「北韓人権調査委員会(COI)」の最終報告書発表は、北韓の人権侵害状況について国際的な関心を高めた。だが、世界のどの国よりも、北韓同胞の深刻な人権状況に強い関心を示し、その改善に向け先頭に立って尽力しなければならない韓国でありながら、「北韓人権法」論議は依然低調だ。国会にはこれまで何度か上程されたが、いずれも廃案となった。今国会でも制定されるかどうか定かでない。
国際社会との差歴然
急がれる超党派での制定
韓国では北韓同胞の人権改善を促すための「北韓人権法」が2005年以来国会に提出されているが、与野党の対立により第17代・第18代国会で廃案となった。12年開院の第19代国会に入り、北韓人権法関連案が与党セヌリ党側から5件、野党民主党から5件(北韓民生支援に焦点)が提出されている。
セヌリ党法案は北韓人権財団設立、北韓人権運動に携わる国内民間団体に対する補助金支援などの内容を含んでいる。野党の民主党側は「北韓を刺激するようなものであってはならない。人権問題を前面に押し出せば南北関係に悪影響を及ぼし人権改善に逆効果だ」と主張して譲らず、論議は事実上ストップしている。
民主党側のみならず「進歩派」市民団体なども、韓国国内の民主化徹底を主張しているが、北韓の3代世襲独裁と同胞の最悪な人権状況には終始沈黙し、「北韓人権法」の制定に反対してきた。進歩傾向の代表誌「創作と批評」(2014年春号)が北韓の人権問題を本格的に取りあげた論考を掲載したことが話題になるくらいだ。
一方、国際社会では、国連が05年から毎年、北韓人権決議案を採択している。北韓の人権改善を促す法律は米国が04年、日本が06年に制定し、欧州議会も06年に続き10年に北韓人権決議案を採択している。昨年3月には国連人権理事会で北韓の人権に関する国連調査委員会(COI)の設置を全会一致で決定した。
「これほどの人権侵害がまかり通る国は、現代では類を見ない」COIはさる2月17日に発表した報告書で「北韓が国家政策によって組織的かつ広範囲に人権侵害を行っている。これは反人道的犯罪だ」として、国際刑事裁判所(ICC)に付託するよう国連安全保障理事会に勧告した。
さらに、国連憲章に明示された「保護責任」(R2P)に基づき、「北韓政府が自国民を保護できないため、国際社会はこのような犯罪から北韓住民を保護する責任がある」と強調、今なお続く人権侵害を座視しないよう促している。
「韓国無関心に失望」
こうした中で、北韓同胞の深刻な人権状況に終始強い関心を注ぎ、その速やかな改善に向け尽力しなければならない韓国の国会議員らの関心の低さが際立っている。
米国の人権運動家のスーザン・ショルティー氏(北韓自由連合代表)は、08年9月の時点で「後世の歴史は、北韓の住民たちが苦痛にあえいでいたとき、韓国は何をしてくれたのかを問い詰めるだろう」と発言した。マイケル・カービーCOI委員長は昨年11月、ソウルでの記者会見で「北韓の人権に対する韓国の無関心に失望した」と表明している。
北韓の人権問題との関連で、韓国がドイツ統一から学ぶべき教訓の一つとして、旧西独が旧東独に対して何事にも一方的な譲歩をせず、相互主義を貫いたことが挙げられている。東方政策で平和共存の基礎を固めたドイツ社会民主党は、東独の全体主義的なスターリニズム体制には終始一貫して批判的であり、普遍的な人権をめぐっては原則的な立場を貫いた。
北韓同胞は東独よりはるかに残虐な「金王朝」全体主義体制下にある。それを事実上黙認するかのような「南北関係の特殊性」を持ち出すことなく、超党派で北韓同胞の人権状況改善を促す「人権法」の一日も早い制定が望まれている。
(2014.3.19 民団新聞)