対話ポーズに惑わされるな
核放棄なき変化ない
4年前の3月26日夜、西海の白 島近海で通常の警戒任務についていた天安艦が北韓の奇襲による魚雷攻撃で爆沈し、大切な息子であり、家長であった46人の尊い命が一瞬にして奪われた。多国籍の専門家で構成する合同調査団の精査により、北韓魚雷による水中爆発で発生した衝撃波が船体を真っ二つにしたことが確認された。
この蛮行の元凶はほかでもない金正恩だった。父・金正日から独裁者の地位を譲り受ける過程で、自身の業績誇示のために軍部強硬派と緻密な計画のもとに実行したのである。
韓国に対する金一族の武力挑発は絶えたことがない。初代・金日成は6・25奇襲南侵によって人類史上でもまれな同族相食む悲劇をつくった張本人だ。2代目・正日はアウンサン廟爆破、大韓航空機爆破事件などを引き起こしただけでなく、一代目が死亡した翌1995年9月、自身の権力基盤を固めるために、「今や共和国で銃声を響かせる時だ」とうそぶき、各地で数百人を公開処刑するなど筆舌に尽くせない弾圧を人民に加えた。
3代目・正恩も狂気をそのまま引き継ぎ、軍部隊をまるで聖地のように巡礼し、天安艦爆沈に続いて同年11月23日、今度は平和で静かな延坪島にいきなり砲弾を浴びせている。この無差別砲撃によって、島は阿鼻叫喚の地獄となり、住民たちは恐怖にかられ島を離れなければならなかった。
2011年12月の2代目急死にともない独裁者の座についた正恩が好んだのは、長距離弾道ミサイルの発射や核実験の強行による武力示威、飢餓に耐えられず国境を越えた脱北者の公開銃殺、馬息嶺スキー場など特権層のための娯楽施設建設における強制労働、政治犯収容所における人権蹂躙など、過酷な恐怖政治である。
3代目の独裁者は今後も、目的達成のためには手段と方法を選ばないだろう。最近、離散家族再会に応じる融和的な態度を見せる一方で、東海にミサイルやロケット砲を発射して韓国を威嚇している。北韓の和戦両用作戦は警戒しなければならない。政治経験の乏しい若年の正恩は、権力の座を守るためにいつでも新たな軍事挑発に打って出るだろう。
かなりの数の日本人を拉致し、政治的に利用してきた国は北韓だけだ。この破廉恥な犯罪に対して、謝罪や反省はもちろん真相調査と再発防止の約束もしていない。それにも関わらず、国際社会の制裁によって窮地にある北韓は、日本に対して関係改善への秋波を送っている。
醜悪な対日接近
日本人拉致問題の解決と北韓地域における日本人の遺骨調査に強い意欲を持つ日本政府を引き込み、外貨不足の打開を試みるものだ。被害者である拉致日本人をも人質に利用する北韓の心根はあまりにも醜悪である。
核兵器開発に固執し、武力挑発を放棄しない北韓に、なにがしかの変化を期待するのは危険がつきまとう。日本はこれからも、北韓に対し断固たる姿勢を見せるべきだ。それこそが北韓をして、変化の道を歩ませることになるだろう。
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プロフィール
イ・エラン 社団法人「北韓の伝統食文化研究院」院長、「ひとつの女性会」代表。89年新義州軽工業大学食料工学部卒、97年脱北、09年梨花女子大大学院食品栄養学科博士取得、10年米国務省制定「勇気ある国際女性賞」受賞
(2014.3.26 民団新聞)