ナノテク バイオと融合
超微細の世界で
超微細の領域の物質を取り扱う、ナノサイエンス、ナノテクノロジーと称される世界。1ナノ㍍(記号はnm)は1㍍の1億分の1で、肉眼で見ようとすれば、電子顕微鏡の倍率を数十万倍から百万倍にしなければならない。
「素材をナノスケールにまで小さくすると、物理的に異なる特性を示すようになる。それを応用し、主に半導体加工技術を用いた、マイクロ・ナノスケールでのデバイス製作などの研究を行う。実用化に適した、安価で省エネ、高機能のデバイスを追求している」
電子回路や各種センサー、機械部品などを1つの基板上に集積したデバイスをMEMS(メムス=マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムの略)と称する。
半導体が産業のコメと呼ばれたのに対して、MEMSは産業のマメと称される。微細ではあっても、MEMSを組み込んだ製品にすばらしい効用・機能を与える活力源となるからだ。
「単一細胞の電気・物理的特性を測るMEMSデバイスは、狭い場所で集積化が可能という特長を有する。携帯機器やバイオセンサーなどに適している」
ソウル大学卒業後、指導教授の推薦で東京大学大学院に進んだ。博士論文のテーマは「マイクロマシニングのマイクロ部品計測」。博士研究員としてフランスおよびオランダの研究所で勤務。そこでナノテクノロジーの世界に入り込んだ。「国際的トップレベルの研究に参加できたのは幸運。日本では始まったばかりだった」
2000年に先端研究のメッカ・東大生産技術研究所(マイクロナノメカトロニクス国際研究センター所属)の准教授就任と同時に再び渡仏し、同センターパリ事務室を立ち上げた。4年間駐在しながら、各国の研究者と交流を深め、共同研究の下地を築いた。現在、日本をはじめ、韓国、フランス、オランダ、ドイツ、スイス、米国、台湾などの研究者らと共同で取り組む。
安価で高機能性
「今後のテーマは、次世代のナノテクノロジーによる医療、情報、新エネルギー、安全分野における応用だ。特に有望分野が、バイオや医療との融合。たとえばポイント・オブ・ケア。携帯用医療診断チップや高感度のナノバイオセンサーなどを利用し、血糖値や血圧といったデータが病院に伝送され、ワンポイントで症状がわかるようになる。治療から予防の時代に変革していく」と、新開発に期待を寄せる。
「実用化には低価格かつ高機能性が不可欠。技術の蓄積こそ重要」と強調する。昨年6〜7月には、米ハーバード大学医学大学院で共同研究を行った。
毎月のように海外に出張する。これまで国際学会での発表は110件余を数える。センサー学会の「センサー・マイクロマシンと応用システム」をはじめ、優秀論文賞を受賞している。韓・日・英・仏の4カ国語を話すことができる。
趣味は水泳と、最近足が遠のいたスキューバダイビング。
(2014.4.9 民団新聞)