必ずしも「連(つる)むより単独行動が好きなタイプ」ではないが、ランチタイムのひとり飯、飲み屋でのひとり酒に抵抗はない。
ただ、ひとりで外回りをしていた頃、ビジネス街でランチ時間を外して食事処に入っても「おひとり様ですか」と聞かれ、狭いカウンター席を指定されることだけはイヤだった。そんな店なら無言で背を向ける。肩をくっつけあって餌をついばむ養鶏場の鶏じゃあるまいし。
在日同胞経営の焼肉店はその点、鷹揚と言えるだろう。20年ほど前にはおひとり様専用の席がお目見えしたとはいえ、さほど普及することはなかった。外出中のランチは焼肉店でとることが自ずと多くなったが、それはそれで、知り合いの韓国人にばったり会うことがままあり、「ひとりで飯食うの? へえ」なんて言われ、「ずいぶん寂しい男だね」なんて目つきをされたこともある。
韓国では長い間、連れだって遊び、飲食することが当たり前とされてきた。しかし、その様相がかなり変わってきたらしい。おひとり様専用席のある食堂やカフェが増えただけでなく、いわゆるひとりカラオケもはやっているという。ひとり所帯が4人所帯を上回り、全体の4分の1を占めるまでになった社会事情の反映と分析されている。
仲良しどうしの食事会でもあまり会話が成り立たず、皆がみなその場にいない誰かとつながるための端末を操作している光景は、韓国でも珍しくない。権威ある未来研究機関の報告によれば、15年後には「チームワーク」とか「会議」などがなくなるらしい。世界で20億口の仕事場が消え、ひとり企業が増えるからだそうだ。「おひとり様」はどこまでも、か。(S)
(2014.4.23 民団新聞)