民団中央 全組織で募金開始へ
乗員乗客476人を乗せ、仁川から済州に向かっていた韓国の旅客船「セウォル号」(6825㌧)が16日朝、全羅南道珍島沖で転覆・沈没した事故は、6日間147時間が経過した22日正午現在、官・軍・民あげての懸命な救出・捜索活動にもかかわらず、救助されたのは174人にすぎず、行方不明者は依然197人を数えている。犠牲者遺族や不明者家族の悲憤は募っており、在日同胞社会にも沈痛が重苦しく広がっている。事態を注視してきた民団中央本部は、募金活動を組織的に展開することにした。
事故発生の翌17日、午前から始まった「2014年度前半期全国地方団長・中央傘下団体長会議」の冒頭あいさつで、呉公太中央本部団長は、「乗客の大半が修学旅行中の高校生(325人)だ。あまりにも痛ましい。しかし今は、一人でも多くの命が救われるよう念じるほかない」と沈痛な面持で語りかけた。金漢翊議長、韓在銀監察委員長もあいさつでそれに続いた。
中央本部にはこの17日から、「救出作業が難航している。我々の心情を伝えるためにも、物心両面での支援を急ぐべきではないのか」「犠牲者が増えている。弔慰金を出したいがどうすればいいのか」「民団はどう対応するつもりか」といった要求や問い合わせが在日同胞や日本人、韓日のメディアから寄せられ始めた。
中には、今年2月に慶尚北道慶州市で起きたリゾート施設での屋根崩落事故(100人超の学生が死傷)、聖水大橋崩落(94年。中高生ら32人死亡)、三豊百貨店崩落(95年。502人死亡)など過去の惨事をあげながら、韓国における安全軽視の風潮・体質の表れにほかならないと嘆く声も少なくない。
また、セウォル号が12年10月に日本から購入した老朽船であるうえに総トン数を800㌧増やす改造をしていたこと、非常時対応訓練がほとんど行われていなかったこと、さらには船長ら乗組員が乗客救出義務を放棄したことなどから人災の極みだと指摘する一方、救出・不明者捜索が続いているさなかに事態を政治利用しようとする動きがあることに憂慮を示す意見も目立った。
韓国の海難事故で過去最悪だったのは、93年の西海フェリー転覆沈没事故だ。110㌧で定員は乗組員14人、乗客207人だったにもかかわらず計362人が乗船、そのうち死者・行方不明者は292人にのぼった。
呉団長は22日、「じっとしてはいられない焦燥にかられている。しかし、過去最悪の事態になるなどとは考えたくない」と述べ、「懸命な救出・捜索活動が続いている。今は何よりも、犠牲者遺族や不明者家族の心情に寄り添い、不明者が一人でも多く救出されるよう、すべての海外同胞が切実に願っていることを伝えたい」と語った。
民団は組織募金を28日(月)から5月28日まで展開するとともに、事態の推移を見極め、犠牲者への哀悼と遺家族の心痛を慰労する事業を執り行う考えだ。
■募金
あすか信用組合 恵比寿支店 口座番号=(普)0072031
口座名義=旅客船沈没惨事募金 呉公太
(リョキャクセンチンボツサンジボキン オゴンテ)
(2014.4.23 民団新聞)