韓国の大型旅客船「セウォル号」の沈没から16日目の1日、死者は213人、行方不明者は89人となった。事故当時から政府の対策本部の混乱ぶりや初動の遅れなどについて批判されてきたが、それについては一切触れないでおく。「セウォル号」には修学旅行中の高校生、教員ら476人が乗船していた。なかでも若い命が犠牲になったことは、胸を締めつけられる。
先月、聯合ニュース(18日付)は「韓国旅客船沈没 結婚控えたカップル死亡『天国で幸せに』」と題する記事を掲載した。結婚を約束していた、船上でアルバイトを続けていた男性と乗務員女性のカップルがともに命を落とし、両家の両親によって、葬儀の後に「霊魂結婚式」を挙げるという内容だ。
2人はともに20代。韓国では、未婚で亡くなった男女のために行う「霊魂結婚式」と呼ばれる伝統的な風習がある。亡くなった2人の霊魂が穏やかになるように、死後の世界で寂しくないように、そして、生きている者たちの悲しみを慰めるためという意味がある。親たちの子に対する気持ちが痛いほど伝わってくる。
亡くなった多くの若者たちは進学や就職、結婚など、夢や希望に溢れていた年齢だ。道半ばで人生を絶たれた苦しみは、想像にあまりある。今、絶望感や苦しみと戦っている犠牲者遺族や不明者家族のことが気が気でならない。
「皆さまの心情に寄り添いたい」と、民団が展開している募金には、在日同胞ばかりか、多くの日本人からも寄せられているという。せめてはその真心が犠牲者家族や不明者家族に届き、生きる糧になることを願っている。(O)
(2014.5.7 民団新聞)