韓国人原爆犠牲者碑前
【広島】韓日両国の平和や共生を願い、平和記念公園(広島市中区)の中の韓国人原爆犠牲者慰霊碑の近くに植樹された朝鮮五葉の木が、根こそぎなくなっているのがこのほど、わかった。木を管理している民団広島本部(沈勝義団長)が確認し、最寄りの中央署に被害届を提出した。公園を管理する市は、「自然に枯れたとは考えにくい」と見ている。人為的に抜き去られた可能性が極めて高い。
「陰湿な仕打ちに怒り」 民団広島
朝鮮五葉は別名「チョウセンマツ」とも呼ばれているマツ科の常緑高木。早稲田大学、高麗大学、朝鮮大学(光州)で構成する韓日学生交流ツアー(早稲田大アジア研究機構主催)の参加者たちが11年8月5日、韓国人原爆犠牲者慰霊碑の前で合同追悼式をした際、駐広島総領事館の辛亨根総領事(当時)の協力を得て植樹した。
育つと高さ30㍍ほどに成長するが、なくなった当時はまだ50㌢ほどの苗木状態だった。
民団が異変に気付いたのは4月24日。市民からの「韓国人原爆犠牲者慰霊碑の横にあった五葉松の木がなくなっている」との連絡だった。
翌日、県本部総務部長の李政子さんが現地に赴き、銘板だけがむなしく残されているのを確認した。
現場近くで清掃をしていた男性によれば、「なくなったのは4月16日午後4時30分から5時までの間。その日の朝はあった」という。民団は対応を協議し、中央署本通り派出所で中谷礼志・中央署警備課係長と面談し、被害届を提出した。
民団広島本部の丁基和事務局長は、「まだ小さな苗木状態の松に対しての仕打ちとしてはあまりにも冷酷。恐怖さえ感じた」という。さらに、犯行日が16日だとすればセウォル号沈没惨事とも重なるだけに、「人間として許すことのできない陰湿で、卑怯な犯罪と思う」と、憤りをあらわにした。
韓国人原爆犠牲者慰霊碑はこれまでにもたびたび嫌がらせを受けてきた。広島市民や全国各地から訪れる修学旅行生らの手向けた折りづるが77年1月、87年5月、90年5月と相次いで放火された。99年10月には台座の亀頭部にペンキがかけられるという事件も起きた。
いずれも今日まで犯人を特定できていない。
(2014.5.14 民団新聞)