【大阪】大阪府門真市が、特定の民族への差別と暴力を扇動する排外主義団体にいったん出した市の施設使用許可をこのほど、取り消した。これは「規制する法律や条令がない」と及び腰な自治体が多いなかでは、極めて異例なケースだ。門真市の一市議が繰り返し説いてきた差別・怒号などの人権侵害と暴力行為を常習的に繰り返す団体から住民の安全と尊厳を守れという「市民目線に立った総合的な判断」が最終的に市を動かした。川崎市、千葉市など他の自治体にも同様の判断が広がっている。
「市民の安全と尊厳を守るため」
門真市教委が示した許可取り消し理由は、「人種、民族、門地など人が生まれながらにして持ち、自ら選択する余地のない点や国籍などの属性を捉まえての差別行為は許されない」と明確。さらに「子どもたちも使う施設だから」と付け加えた。
同市は表現の自由を保障する立場から、特定の団体・個人を規制の対象としているわけではない。「市民ならば公共施設は誰でも使用できるのが原則」としながらも、許可にあたっては市民の安全と尊厳を守ることを土台として総合的に判断していくとしている。すなわち、市民がおぞましさを覚えたり、危険性を感じたりする行為に対しては、これからも許可しないことを「示唆」したものといえる。
申請者は4月14日、ホールを訪れた。「在特会」という所属団体を自ら名乗り、「朝鮮人は糞を食う民族だという講演会をする」と目的も明らかにした。開催予定は5月11日とした。
施設の担当窓口はその場で許可書を出したが、ホールを所管する教育委員会内部では「こんなひどい人権侵害差別企画は許可を取り消さないといけない」という声が支配的だった。ホールの指定管理者も「市当局の判断に全面的に協力する」姿勢を示した。
ところが、市当局内のコンプライアンスを重視する法務担当が、「許可取り消しは憲法の言論の自由に違反する。裁判されたら負ける」と庁内論議をリードした。
これに「人権無視」と異を唱えたのが門真市議の戸田ひさよしさんだった。戸田さんは2年半前から議会で質問を繰り返し、「外国籍住民に対して差別を扇動する行為には毅然とした対応を行う」という姿勢を引き出してきた。市がこのような集会に公共施設を使わせるのは、これまで築き上げてきた議会答弁に対する明らかな違反だった。戸田さんの指摘には多数の市民も同調した。5月2日に「許可取り消し決定・通知」が出されている。
(2014.6.11 民団新聞)