◆◇◆相続人は代表選任も…大量の書類 準備は万全に
どこの銀行に預金があるかがわかれば、各銀行を訪ねて取引支店の確認を行います。残高照会をするにしても最初から相続手続の準備書類を持参するのが良いでしょう。残高確認をするにも預金名義の変更をするにも同様の書類が必要だからです。
慎重すぎる銀行事前確認すべき
不幸にして預金残額が少なかった場合は、残念ですが韓国旅行ができたと思うようにしましょう。
銀行預金の相続にはいろんな書類が必要です。特に重要なのは「遺産分割協議書」です。預金名義を誰にするかを決めておかないと、相続人全員が訪問して、全員の名義にさせられるか、代表者の選任を求められます。事前に相続人代表者選任書で相続手続の代表者を選任して委任状を作成することも有効です。
さて、ここで問題があります。相続手続きに関しては、銀行は非常に慎重になります。なぜなら、相続は〞争続〟といわれるように相続争いが多いので巻き込まれたくないのです。相続争いほど醜いものはないのですが、銀行も誰かに加担したような間違いをして追及されるようなことを恐れます。
日本の銀行等でもよく揉めるのですが、銀行によっては頑なに「銀行所定の様式でないとダメ」だとか、「様式に相続人全員の署名捺印することを要求する」ところもあります。事前に確認し、申請様式を入手する必要があります。
ざあっと必要書類の一覧を挙げておきます。
▽遺産分割協議書原本又は公正証書型遺言書謄本又は家庭裁判所検認済自筆遺言書原本▽金融機関所定様式相続預金関連申請書▽新しい預金通帳用印鑑▽死亡事実が記載された死亡者(被相続人)の基本証明書又は死亡診断書原本▽被相続人の出生から死亡までの除籍謄本▽被相続人の家族関係証明書▽相続人全員の身分証写本(パスポートと運転免許証又は外国人登録証又は特別永住者証明書等)▽相続人が日本に帰化している場合、日本の戸籍謄本▽代表相続人選任書▽全相続人の印鑑証明書▽相続人関係図
さて、ここでも問題があります。昔は融通のきく銀行が多かったのですが、最近は金融監督当局の検査が厳しく、マニュアル化された手続きを正しく履行したかを検査されます。相続手続きも例外ではありません。
また、韓国では漢字を読めなくなった人が多くいるので、日本の漢字で書かれた公的書類を読解することができません。それも融通がきかなくなった理由の一つです。
具体的には、日本語で作成された書類は、韓国では漢字ひらがなを読めませんので当然翻訳文を要求されます。もっと正確に言えば韓国領事館公証付翻訳文が必要です。
外務省認証など厳格な公的書類
それだけではなく、印鑑証明書一つにしてもそれが本物であるかどうか、韓国の銀行員には知るすべがありません。日本の戸籍謄本や公正証書などの公的書類であっても、日本外務省のアポスティーユ認証(日本の役所等の公的機関が正式に発行したという証明)と韓国領事館公証付翻訳文を要求されるようになりました。ますます厳格になってきた感じがします。
翻訳文も持たずに銀行を訪ねて、相手にされなかったといって怒って帰ってこられた人の愚痴を聞きました。日本語を理解する銀行員がいた時代や漢字を理解する銀行員がいた時代とは違い、本物かどうかも識別できない、見たこともない印鑑証明書を「印鑑証明書」と判読できない人間に何と説明しても無理は無理なのです。そのことを在日のほとんどの人が理解していないのが不思議でなりません。そのような厳格さは日本の銀行も変わりません。
全国相続協会相続支援センター 在日韓国人相続相談室室長 鄭相憲)
(2014.7.30 民団新聞)