日本の恥防波堤に
夢は「ツレがウヨになりまして」ソウル公演
「時事ネタは、由々しき問題だと思っていることでも、面白い芝居にできそうになかったらしない」。京都を拠点に活動する劇団「笑の内閣」主宰者で、劇作家・演出家の高間響さん(30)が芝居でこだわるのは笑いだ。2012年初演、今春は東京、札幌、京都で再演された「ツレがウヨになりまして。」は、問題の核心に迫りながらもコミカルな要素がきらりと光る。この作品を引っさげて、ソウルで公演するのが夢だ。
「別に何か特別なものがあったわけでもなく、日本に生まれた日本人というだけで優越感を持ち、日本が馬鹿にされたら自分が馬鹿にされたみたいに怒り出して。日本とお前はイコールじゃないんだ」。韓流イベントを開いているフジマーケットの店長が、「韓流のごり押し」だと開催中止を要求しに来た愛国者を気取るネトウヨ(ネット右翼)の男を、論破した時のセリフの一部だ。
愛国心を問うた青春ラブストーリー「ツレが…」は、「CoRich舞台芸術まつり2014」で準グランプリを獲得するなど注目された。同団は、高間さんの自作コメディを上演するため、05年に結成された。本格的なプロレス芝居から時事ネタまでと幅広い。
小学生の頃から選挙マニアだった。「本当に好きなんですよ、政治ネタが。選挙速報も選挙予想も大好き」
高間さんがこれまで手がけた話題の時事ネタは「東京都青少年の健全な育成に関する条例改正案」を扱った「非実在少女のるてちゃん」、風営法によるダンス規制を取り上げた作品「65歳からの風営法」などがある。
「65歳から…」は昨年、京都公演を観に来た福山哲郎参院議員(ダンス文化推進議連副会長)から声がかかり、初めて星陵会館(東京・永田町)で公演し、国会議員ら100人以上が観劇した。
高間さんにとって芝居は「笑いがイチバン」。「ツレ…」の脚本を手がけたのは、フジテレビの韓国ドラマ放映に対する抗議デモの主宰者が「彼女ができたからデモをやめる」という話しが面白かったから。「僕は脚本を書くけど、思いつかないセリフだったので、悔しかった」
ネトウヨの誹謗、中傷などについては「ある意味、僕が防波堤になったらいいと思っている。在日の子どもたちも傷つく人は多いはず。ネトウヨの攻撃を受けても傷つかない僕の方に向いてくれていれば。カウンターの論理もそうです」。
「ツレ…」では極力、舞台装置や役者の人数を縮小した。これは再演の依頼が来た時、必要最小限度でできるようにとの思いからだ。「この作品は、何度も上演しながら育てたいという意図を持って作った」。夢はソウルでの公演だ。
危ないヤツ一部なのに
「僕らはニュースでしか韓国のことは知らないけれど、日本でもネトウヨの人たちはおかしい、という扱いをされていることを知ってほしい。本当に日本の恥なので。誤解されたくないんですよ、日本のことを」 そして、これを言うと失礼になるかも知れないと前置きし、韓国で反日デモを行っている人たちに言及した。
「そういう人たちが、国中にいる訳ないだろうと思っている。でも日本では鵜呑みにしている人もいる。お互いに、危ないヤツがたくさんいると思っているのは不自然だし、まともな人の方が多いんだよってならないと」
高間さんは「ツレ…」の韓国版を作りたいと話す。「日本と韓国は合わせ鏡的なところがある。お互いにそういう人たちが目立つのではなく、普通に暮らしている人たちとなら分かり合える」と思うからだ。
「これから韓国語を覚えて、日本でしか通用しないギャグを書き直したい。もっと多くの方に観てもらいたいので、再演の依頼がきたら嬉しい」
「ツレがウヨになりまして。」のDVDは、5本単位で購入可能。定価2000円。問い合わせは「笑の内閣」(090・2075・0759)。
(2014.7.30 民団新聞)