◆◇◆相続税支払い送金可…現金の海外持出には制限
◆税務署の確認書添付で全額送金
銀行での相続手続には2〜3時間かかります。各銀行により若干取扱手続が違うなど非常に面倒なので我慢が必要です。
相続する預金の名義を変更した後、相続税を支払います。相続人各自が支払うことになります。なるべく単純な手続きにするために預金名義は単独名義をお勧めします。
10万㌦を超える金額の相続の場合、相続税を支払った後、税務署長発行の「預金等資金出処確認書」をもらうことができ、これを銀行の「在外同胞財産搬出申請書」に添付すれば日本の自分名義の口座へ全額送金することができます。自分名義以外の口座へは全額送ることはできません。あくまで「預金等資金出処確認書」をもらった人だけの特権だと思ってください。兄弟や子供名義の口座に移すと贈与税が発生します、その人たちには「全額持出」の特権が与えられません。注意してください。
韓国に相続預金を留め置く場合は、日本の税務署に「国外財産調書」を提出する義務が生じます。海外で持っている預金や不動産等が5000万円を超えている場合に、2014年から税務署に申告しなければならなくなりました。
資産運用の面から言えば、何度も韓国に行く機会がある方はそのまま置いておくのも良いと思います。韓国の方が断然預金金利がよいからです。 相続資産や不動産売却資金以外は累計10万㌦を超過して送金することはできません。現金の持出しも、海外から韓国内に現金を持ち込んだ証明の税関申告書や資金出所確認証明書等でそのお金の取得根拠を示せない場合は1回の渡航で1万㌦(約100万円)の限度があります。
この制限を知らずに多額の現金を持ち出そうとして空港税関で捕まる人が多くいます。最近はマネーローンダリング(犯罪資金洗浄)を防止するための検査も厳しくなり、多額の現金だと麻薬等の犯罪資金ではないかと疑われ、非常に厄介です。韓国の小切手も持ち出しは違法ですし、日本で換金できません。私の知人も400万円程度を持ち出そうとして税関で足止めされ、飛行機に乗ることができませんでした。大丈夫だろうと思う責任は自分自身でとらなくてはなりません。
◆国税庁宛に海外送金調書提出も
日本の場合、「国外への送金や国外からの送金受領」があると、税務署から「国外送金等に関するお尋ね」が送られてくることがあります。これは、税務署が皆さんの海外送金の受領を把握しているからです。
なぜなら、送金を受け付けた銀行は「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」によって、「100万円を超える国外送金」に関して、税務署へ「国外送金等調書」を提出しなければならなくなったからです。銀行からの調書を受け取った税務署は、「国外送金等に関するお尋ね」を作成して、対象者宛に送付します。具体的な送金明細や取引内容のわかる書類(申込書)のコピーの添付も求めています。
銀行のコンピューター化が進んだこともあって、分散送金しても名寄せや合計金額を容易に調査できるようになっています。税務当局はすべての送金を調査して把握することができるようになりました。
犯罪収益移転防止法に関連して、マネーローンダリング防止のため、銀行等の金融機関は運転免許証等で本人確認とともに、10万円以上の現金送金はその資金の出所や送金目的の確認書類まで要求するようになりました。韓国で相続したお金であるとか、不動産を売却したお金であるとかの資金出所の証明書類を提示しなければなりません。理由なく拒否すると、銀行から金融庁を通じて警察へ「疑わしい取引の届出」を秘密裏にされてしまいます。
全国相続協会相続支援センター 在日韓国人相続相談室室長 鄭相憲)
(2014.8.15 民団新聞)