冷蔵庫を開ければオモニ手作りのキムチが当たり前にあったのに、ひとり暮らしになった今はそうもいかず、ご無沙汰している。うるさく催促する胃袋をなだめようと、近くのコリアタウンのスーパー売り場を物色したが、その種類の多さにびっくり。どれを買おうかと迷いに迷った。
一口にキムチと言っても、本場韓国の味は千差万別なのだろう。素材も白菜からキュウリ、大根、ネギ、キャベツ、小松菜、からし菜、エゴマの葉など豊富にある。今やそれらが醸し出す味は星の数ほどあるといっても過言ではない。
昨年12月に「キムジャン文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されたせいか、そんなキムチたちも誇らしげに並んでいる。
ワイン造りの本に「ワインは天・地・人によって造られる」と書かれていた。気候・土地・造る人の個性という三つの要素によって味が決まるという。キムチにも同じことが言えるのだろう。
伝統を守りつつも、時にはつくり手自らの感性で新しい味を生み出していく。そういえば友人のオモニは、リンゴや柿、スイカのキムチを色々試作して好評を博しているとか。多種多様なキムチが食べられるのもそんなチャレンジをしてきた先人のおかげである。
キムジャンはもともと初冬に、家族や近所の人が集まり、野菜が不足しがちな冬にそなえて皆でキムチを漬け、時にはおすそ分けし合う共同体の風習であったという。ビタミンや乳酸菌が足りずに真冬の様に冷え込んだ韓日関係。これを溶かす鍵はそんな「キムジャン精神」にあるのかも知れない。
(U)
(2014.10.8 民団新聞)