「この光景、どこかで見たな」
9月、夏季休暇で数年ぶりに韓国へ行った。金浦空港やバス、明洞でも聞こえてきたのは中国語。「日本語が恋しい」
翌日、朝食を食べに明洞の粥専門店に行くと2組の先客があった。日本人女性グループは、すでに注文を終えて料理を待っていた。中国人女性グループはメニューを見ながら検討中。
韓国語で注文した私たち在日組みは最後だったのに、なぜか最初に運ばれてきた。「?」。最後に来たのは日本人組だ。日本人に対する嫌がらせか。今、韓国と日本の関係が良くないから? 「まさか」などとと思いつつ、彼女たちを見ると韓国語はほとんど話せない様子。「これじゃ、文句の一つも言えないな」と気の毒になった。
明洞で目についたのはコスメ店と中国語の看板の多さだ。中国人観光客の目的はショッピングで、ブランド品、コスメが人気だと店員から聞いた。複数の買い物袋を手にした人たちを見ていた時、東京・新大久保の街がオーバーラップした。
以前、韓流ブームで新大久保や明洞などは、日本人であふれかえっていた。明洞は今、中国人に取って代わった。仮に、コスメ店ばかりが増えていったら、新大久保と何ら変わりないじゃん。新大久保は韓日関係の悪化やヘイトスピーチによって客足が遠のいたが、理由はそれだけか。ブームに便乗し、状況に甘んじて努力を怠れば名店でも姿を消すし、客は去る。
明洞の皆さん! 中国から人がわんさか来るからといって、胡座をかいていませんか。新大久保の二の舞を演じぬよう、たゆまぬ努力を。そして、ほうぼうから日本語が聞こえてくる街に戻ることを願う。(E)
(2014.10.22 民団新聞)