日本では近年、1人で余暇を過ごす人が増えている。よく言われる「おひとりさま」現象だ。韓国でも「ナホルロ(私はひとり)族」という言葉が生まれた。
家族から独立し、結婚もせずに一人暮らしに逃げ込んでいる若者が韓日で増加しているのだ。情報伝達技術が発達し、「いつでも会える」という安心感から家族と距離を置いてるようにも見受けられる。
確かに1人で過ごす休日というのも時には大切だ。しかしそれも度が過ぎれば周囲や家族との関係が希薄になり、そのうち「ひとり」から「独り」になってしまうのではないだろうかと心配もする。
そんなある日、以前から関心があった日本の伝統芸能、文楽を初めて見た。演目は「傾城阿波の鳴門」の「巡礼歌の段」であった。
訳あって盗賊となった夫と暮らすお弓の家に、ひとりの女の子が訪れる。話すうちに彼女が故郷においてきた娘おつるであることが分かる。両親との再会を願うおつるの健気さと、夫が盗賊であるがゆえに母であることを打ち明けられないお弓の苦悩が巧みに演出されていた。
家族を想い合う心に思わず目頭が熱くなった。涙を流す若い観客も少なくない。親子、兄弟問わず人として情を求めるのはいつの時代も変わらないのだろうと感じ入った。
ドイツの詩人、ゲーテは「王様であろうと、百姓であろうと、自己の家庭の平和を見いだす者が、いちばん幸福な人間である」と述べている。
家族で過ごす休日と1人で過ごす休日、どちらが好きかはそれぞれだが、欲張りな僕としては両方の良さを満喫したいところである。(K)
(2014.11.5 民団新聞)