昨年の12月、韓国の「キムジャン文化」が、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。無形文化遺産とは、人から人へと伝えられてきた祭りや、ものづくりの技術などの価値を世界で認めて、守っていくためのものです。キムチそのものではなく、近所の人たちが一緒にキムチを漬ける、「キムジャン」という風習が登録されたのでした。
韓国の冬は非常に厳しい寒さです。むかしは冬に野菜を得ることはむずかしいことでした。ですから冬の間に食べるキムチを、一度に大量に漬けて保存しておきました。なにせ大量ですから、家族だけではぜんぜん手が足りません。そこで、こっちの家が終わると次はあっちの家、というように近所の人たちがお互いに助け合ってキムチを漬けてきました。この風習を「キムジャン」というのです。
今では、冬でも新鮮な野菜が手に入りますし、キムチ専用冷蔵庫も普及していますから、むかしのように一度に大量に漬けることは少なくなりました。塩漬けしたハクサイを買ってきて、キムチの具だけを入れることも多くなりました。それでもキムジャンは、外すことのできない家族の大切な年中行事なのです。その年の気候にもよりますが、本格的な寒さを迎える直前の11月下旬から12月初旬がピークのようです。
そうそう。キムチを全部漬け終えたあとに、漬けたてのキムチの味見を兼ねてする食事会も、キムジャンの楽しみのひとつです。
「今日は、ありがとう。次はわたしたちがいくわ」 そんな思いをこめて食事をふるまうのです。このようなお互いを助け合う風習は、いつまでもずうっと続いてほしいものですね。
さて、今回紹介する『きょうはソンミのうちでキムチをつけるひ!』は、まさに、キムジャンの日のお話です。表紙の絵やタイトルだけを見ていると、だれもがお話の主人公はソンミの家族だと思うことでしょう。でも、主人公はもう「ひとり」いるのです。ソンミのうちの裏庭に住む、ネズミの家族です。
ネズミのオンマが、高らかに宣言します。
「今年は、うちでもキムチを漬けるわ。毎年毎年、ソンミのうちからもらって食べるのは悪いから」
ネズミの家族がソンミのうちにおしかけると、ちょうどソンミのハルモニが、ソンミにキムチの漬け方を教えているところでした。 ネズミたちも、ハクサイをあら塩で漬けこんで、一晩寝かせることから学びます。次の日にはハクサイを水洗い、具の準備もして、もち米をぐつぐつ煮るのも真似します。近所のおばさんたちが、ハクサイに具を入れるのを手つだいにやってくると、やはり同じように、近所のネズミたちもやってきます。そしてキムチのできあがり!
絵本を読み進むうちに、キムチの漬け方をしっかりと学べます。しかもうれしいことに巻末には、保護者に向けたキムチの説明が書いてあるのです。白菜のキムチをはじめ、13種の代表的なキムチの説明も写真入りで紹介されています。
日ごろ何気なく食べている国民食、キムチ。親子で絵本を見ながら、自分のうちのキムチについて話し合ってみてはいかがでしょう。
キム・ファン(絵本作家)
(2014.11.12 民団新聞)