わたしは小学校の頃からずうっと、「韓半島は、ウサギの形をしているんだよ」と教わって育ちました。ところが大人になり、韓国に頻繁にいくようになると、トラの形をした半島地図をよく目にするようになったのです。あれっ? 韓半島はウサギの形のはずなんだけどなぁ……。
これは日本統治時代に、日本の地理学者が本に記したのがきっかけで広く定着し、解放後もそのまま引き継がれたからだそうです。 近年韓国では、先祖たちは自国をどのような形と認識していたのだろうか、という研究が盛んになっています。その結果として、むかしは「トラの形」と考えていたということがわかってきました。
トラの半島地図としてとても有名なのは、高麗大学の博物館に所蔵されている「槿域江山猛虎氣像図」です。この図の作者は不明ですが、19世紀末から20世紀のはじめに描かれたと推測されています。
この図でいうと、トラのお尻の部分が慶尚南道。少し北にある慶尚北道の浦項には、ホミコッ(虎尾串)と呼ばれる場所があるのですが、まさに名前の通り、トラのしっぽの付け根にあたるのです! むかしから半島がトラの形と考えていなければ、このような地名は生まれません。むかしの人たちが、「韓半島はトラの形」と考えてきた動かぬ証拠というわけです。
そう。トラはむかしからウリ民族の象徴です。1988年のソウルオリンピックのマスコットも、「ホドリ」というトラでした。ですからトラがでてくるむかし話は、たくさん伝わっています。神聖な神さまだったり、力強い正義の味方だったりする一方、人を食う恐ろしい敵だったり、ドジなマヌケだったりします。いまだに、これまで知られていなかったトラのむかし話が新たに発掘され、絵本として発表され続けているのですよ。
そんな数あるトラのむかし話のなかから、今回は『とらはらパーティー』を紹介しましょう。
むかし江原道の金剛山のふもとに塩売りが住んでいました。塩がちっとも売れないので、山を越えてちがう村へとでかけていくと、目の前にほら穴が現れました。ほら穴はどんどん大きくなっていきます。
アイゴ! ついにほら穴は塩売りを飲みこんでしまいます。ほら穴だと思っていたのは、山ほどもある大きなトラだったのです。
しばらくすると、アイゴ! 慶尚道の太白山のふもとに住む炭売りが。そしてまた、アイゴ! と、忠清道の俗離山のふもとに住むかじ屋も、トラのおなかのなかに落ちてきました。
これからどうする? 話し合っているうちにこばらがすいてきた3人は、妙案を思いつきます。かじ屋がトラのはらのなかをくり抜き、塩売りが塩をふりかけ、炭売りが炭に火をつけ、肉を焼くのです。全羅道に着いたトラは……。
むかし話を楽しんでいるうちに、韓国の地理が自然と頭に入ってきます。でも……。江原道、慶尚道、忠清道、全羅道がどこなのか、わからないと心配なみなさん。ご安心を。ありがたいことに表紙カバーの裏側に、ちゃんと地図が載っていますよ。韓国の地理を知るのにもお勧めです。
キム・ファン(絵本作家)
(2014.11.26 民団新聞)