学術・推進会議を公開
対象史料「相互性」柱に
【長崎】「朝鮮通信使」関連史料の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録をめざす韓日両国の民間団体が1日、長崎市内の長崎歴史文化博物館で開かれた登録推進シンポジウムで、「今年がヤマ場」との認識を明らかにした。16年の共同申請に向けて、双方とも登録物件の選定を急ぐ。秋にはそれぞれの申請書を作成し、さらにそれをどう一つのものにまとめていくかが課題となる。
韓国側「埋もれたもの発掘して」
長崎県が積極支援約束
朝鮮通信使ゆかりの15自治体や関連団体でつくる「朝鮮通信使縁地連絡協議会」(縁地連、事務局・長崎県対馬市)と、韓国で朝鮮通信使の関連事業を担う釜山文化財団が昨年3月、「ともに登録を目指そう」と正式に合意した。それ以来、公開の場で共同の学術会議・推進会議を行うのはこれが初めて。
記憶遺産登録を目指して任命を受けた韓日双方の学術委員が登壇、今後の戦略を語った。さらに、パネルディスカッションでは今後の展望についても意見を交換した。主催した長崎県の中村法道知事は、「登録に向け、機運を高めていきたい」と、積極的な支援を表明した。
2年前までユネスコ記憶遺産選考委員を務めた西村幸夫さん(東京大学先端科学研究センター所長)が基調講演。登録対象について、「独りよがりではない、世界に通用する普遍的な『物語』を発信していくのが重要」と強調。「国を超えた協調は、ユネスコの論理にもかなう」と述べた。
対象史料は「ユネスコの原則に沿った真正性をもつものであること」。日本側の学術委員会委員長の仲尾宏さんは、「日本に残る国書、書面、絵画などが中心になるだろう」との見解を示した。
釜慶大学教授で韓国側学術委員会委員を務める朴花珍さんは、「日本に与えたものもあれば、韓国が日本から学んだものもある」と述べた。具体的にはコグマ(甘藷)、灌漑用の水車、堤防、船舶、地図など。これらの由来は韓国側でも十分に知られていないという。
これを受けて岡山大学教授で日本側学術委員の倉地克直さんは、「朝鮮の使節が来て日本で書き残したものを日本人が大事にしてきた。逆に日本のものが韓国で大事にされてきた。朝鮮から使節がやって来るとはどういうことなのかを具体的に示す『相互性』は、今後、対象を選定していくうえでのポイントになる」との考えを明らかにした。
ユネスコへの申請は来年3月をメドとしている。申請書は韓日の共同提案となるだけに、日本側委員長の仲尾さんは、「難しい。時間がかかるだろうが丁寧にやっていく」と意欲を示した。韓国側委員の朴さんは、「選定するにあたって意見がぶつかるだろう。お互いの史料のなかで埋もれているものを明らかにするのも重要だ」と述べた。
(2015.2.4 民団新聞)