何てカラフル。これが、韓国のニワトリなんだ! 2001年のことです。わたしは書店でふと見つけた絵本を見て、思わず叫んでしまいました。
主人公の雄鶏は、茶色っぽい体から緑色の羽根がついた翼を大きく横に広げ、黒色と紫色をしたふさふさの尾羽を優雅になびかせていました。今回紹介するのはそのときの絵本、『せかいいち つよい おんどり』です。
ところが、韓国のニワトリについて詳しく調べてみると、悲しい現実を知ることになりました。ウリ民族と長い歴史をともに歩んできた在来のニワトリは、もう滅んでしまって、今はいないという事実でした。
悲運のはじまりは、日本統治時代に養鶏を開始するにあたって、日本から生育が早く産卵数も多い外来種を積極的に導入したことでした。肉づきと産卵数で劣る韓半島在来のニワトリは、徐々に飼育数を減らしていったのです。
それに追い討ちをかけたのが6・25(韓国戦争)。戦う兵士の胃袋を満たすために、海外から途方もない数のニワトリが持ちこまれました。そして戦後も、生産力の向上だけを追求したために、ついに純粋な血統を持つ韓半島在来のニワトリは滅んだのでした。
では、この絵本のニワトリは、韓国のニワトリではないのでしょうか? 画家さんに直接会って話を聞きたいという想いは、日に日に募っていきました。
絵本と出会って3年後の2004年、チャンスは突然に訪れました。イ・オクベさんが、日本で開催される「第7回アジア児童文学大会」最終日のシンポジウムに、パネリストとして招かれたのです。インタビューをさせていただきました。
「子どものころ田舎で見ていたニワトリをイメージしました。今や消えさってしまった在来種の堂々とした姿を再現しようと、博物館や画集に残っている朝鮮時代の画家、ピョン・サンビョク、チャン・スンオプの描いたニワトリの絵と民画などを参考にして、手探りで主人公の雄鶏を創りあげていきました」
絵本の絵には、在来のニワトリへの深い愛がこめられていたことを知り、うれしくなりました。
さて、物語の内容です。生まれたときから世界一。かけっこもジャンプもケンカだって得意。ほかの雄鶏からは悔しがられ、雌鶏からはモテモテの主人公でしたが、やがてもっと強い雄鶏が現れてしまいます。
がっかりした雄鶏は、お酒ばかり飲むようになりました。それを見た奥さんの雌鶏は、「本当の強さとは何か?」を雄鶏にそっと気づかせてあげます。みなさんも本当の強さって何なのか? 絵本を読んでじっくり考えてみてくださいね。
この絵本は1997年の発売以来、今も読み継がれている名作です。教科書にも収録されました。やはり韓国初の「IBBY選定優秀図書」はだてではありませんね。IBBYとは、1953年にスイスで設立された国際児童図書評議会の略称。2014年現在、約77か国が加盟し、「小さなノーベル賞」ともいわれる「国際アンデルセン賞」もここが与えるのですよ。
滅んでしまった韓半島在来のニワトリでしたが、国の在来種家畜復元事業でよみがえりました。
キム・ファン(絵本作家)
(2015.2.25 民団新聞)